日本健康教育学会誌
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特別報告
地域における健康づくり集団戦略の実践とその評価
―身体活動の促進を目指して―
甲斐 裕子
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2018 年 26 巻 1 号 p. 54-58

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抄録

目的:身体活動を高く維持することは心身の健康づくりに有益である.しかし,身体活動不足は世界的に広がっている.では,身体活動促進のためには,地域でどのような集団戦略が有効なのだろうか?身体活動促進のための地域集団戦略について概説する.

内容:地域レベルでの身体活動促進には,メディア戦略や環境戦略などを組み合わせた複合的な集団戦略が推奨されているものの,その有効性を示すエビデンスは不足している.国内では,特に高齢者をターゲットにした地域集団戦略の研究がいくつか行われている.ソーシャルマーケティングの活用,自治体・住民・地域組織との連携,人のつながりを含めた環境整備を行うことで,地域レベルの身体活動促進が可能になるのかもしれない.ただし,効果が表れるためには,少なくとも3年~5年にわたる取り組みが必要である.一方,集団戦略によって健康格差が広がる可能性もある.集団戦略を実施する際は,健康格差との関連を常に頭に置いたアプローチをとるとともに,社会経済的な指標もモニタリングすることが重要であろう.

結論:地域における集団戦略による身体活動促進については,結論が出せるほどのエビデンスはないものの,少しずつ成果が出てきている.特に,自治体や住民とのパートナーシップ戦略は,健康格差の視点からも有効でありうる.しかし,社会は一歩先に動き出している.今後は,社会の動きと連動してエビデンスを蓄積していくべきである.

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