2019 年 27 巻 1 号 p. 115-119
目的:労働者の殆どが働いている日本の中小企業においては,疾病を患いながらも仕事を続けていくための治療と就労の両立支援の普及と推進が喫緊の課題となっている.そこで,労働衛生機関の産業保健師の支援事例および現在進行中の研究からの知見を通して,そのような両立支援の実施状況の課題を踏まえ,産業保健師の支援,役割および課題について示唆を得ることを目的とした.
内容:1)中小企業における産業保健師の活動について事例を示した.2)治療と就労における両立支援の実施状況や支援ニーズ,および支援実施における問題点等について,中小企業経営者3名,ならびに労働衛生機関に所属する産業保健師5名へのインタビュー調査を実施し,質的に分析した結果の一部を報告した.
まとめ:産業保健師の産業保健活動から見た治療と就労の両立支援において,中小企業経営者への効果的な情報提供方法を検討していくことが必要である.経営者や人事労務担当者が医療機関や医療専門職との連携を効果的に図れるようにしていくこともまた,今後の課題である.