日本健康教育学会誌
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特別報告
がんサバイバーの身体活動・運動と健康増進
小熊 祐子齋藤 義信田島 敬之
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2019 年 27 巻 1 号 p. 109-114

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抄録

はじめに:身体活動はがんの罹患および死亡のリスクを下げることが多くの研究で証明されている.がんサバイバーにおける身体活動の効用のエビデンスも集積されている.観察研究によれば,がん診断後の身体活動とその後の予後の改善に関連があることが示されており,がん診断後に運動を続けている群ではその後のがん関連死亡リスクが50%まで低下する.介入研究では,体力の改善,QOL改善,不安やうつ・疲労の軽減,気分の改善,ボディイメージ・体組成等への効果,がんリスクやアウトカムに関連するバイオマーカの改善などが示されている.

身体活動の実状:これらのエビデンスをもとに,アメリカがん協会・アメリカスポーツ医学会は,がんサバイバーの身体活動として,中等度の有酸素系身体活動を週に150分(高強度なら75分),レジスタンス運動は週2回実施すること,および座位時間を減少することを推奨している.しかしながら,推奨量の充足者は30%未満という報告もある.実生活で身体活動を高く保つために実現可能な方法を社会に定着させていく必要がある.

社会実装に向けて:2017年の臨床実践ガイドライン(カナダ)では,一人で自宅で行うより,集団で実施する運動の方が効果的であることが示されている.状況に応じて,指導下に運動を行う機会を設けることと身近な日常生活全般で身体活動を促進することに加えて,これらを長期的に実行できることが重要である.

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© 2019 日本健康教育学会
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