日本健康教育学会誌
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特別報告
口腔保健と栄養—これまでのエビデンスと今後の展望—
岩崎 正則
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2020 年 28 巻 2 号 p. 118-125

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抄録

「口腔疾患・歯の喪失→口腔機能の低下→栄養・食生活への悪影響→全身への悪影響」というシナリオは古くから提唱されてきたものであり,栄養・食生活は口腔と全身の健康を結びつける主要な経路の1つである.近年のエビデンスもこのシナリオを支持している.非感染性疾患(NCDs),フレイル,認知症のリスクを抑制する健康な食事は健康長寿の鍵であり,口腔の機能を維持する歯科保健は,健康な食事に繋がり,最終的にはNCDsなど種々の疾病のリスク低減,健康寿命の延伸に寄与する.さらには口腔と栄養の関連は双方向的であることが分かってきた.口腔機能の低下が健康な食事を阻害するだけではなく,不健康な食事・不良な栄養状態がう蝕や歯周病など口腔の疾患のリスク因子であることを示す知見が蓄積されてきた.

また,歯科治療が口腔機能の改善のみならず,健康な食行動の獲得,栄養状態の改善に繋がるには栄養指導を組み合わせる必要性が示唆されている.

これまでのエビデンスは歯科関係者が十分な栄養の知識を持つこと,また必要に応じて栄養の専門家と連携することの重要性を示している.今後は歯科と栄養との連携による学際的研究のさらなる進展とともに,歯科医師・歯科衛生士などに対する栄養に関する卒前・卒後教育の充実が必要である.

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© 2020 一般社団法人日本健康教育学会
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