日本健康教育学会誌
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特集:第29 回日本健康教育学会学術大会
ナッジ研究における諸課題—倫理的観点から—
山根 承子
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2022 年 30 巻 1 号 p. 68-72

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抄録

近年政府や自治体・企業の取り組みとして注目を集める「ナッジ」だが,誤解も多く,危険な使われ方も散見される.本稿ではナッジの根本に存在する経済学の考え方を改めて示し,主に倫理的な問題点を整理することで,よりよいナッジの普及に貢献しようとするものである.本稿では,インフォームド・コンセントの倫理的な重要性と,同意のあるデフォルトナッジの効果が大きいことから,「本人が知らぬ間に行動変容させる」ようなナッジは慎むべきであると主張する.また,サンスティーンらの著書で「慎重型ナッジ支持国」に分類されている日本でナッジを行うことに対する注意を喚起する.最後に,昨今のパーソナライズドナッジの流れを汲み,健康行動に関わるいくつかの研究を紹介する.パーソナライズドナッジは一律に与えるナッジよりも効果的であるという研究が多いが,パーソナライズするということは距離の近い介入を行うということであり,より倫理的な観点が必要になるだろう.

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