日本健康教育学会誌
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特集:第29 回日本健康教育学会学術大会
人はなぜ“それ”を食べるのか?—未来に向けて考えるべきこと—
吉池 信男
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2022 年 30 巻 1 号 p. 59-67

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抄録

目的:健康教育やヘルスプロモーションにおいて,人々の食行動への介入を行うことの倫理性及び効果的な手段について,社会的変化や急速に進む技術革新を踏まえて考察すること.

内容:1)基本的人権としての「食べること」と介入の倫理性,2)栄養と健康を捉える視点(栄養学的観点),3)食行動を規定する様々な要因,4)ヒトの食行動の生理学的な理解,5)食行動の社会経済的な規定要因,6)デジタルトランスフォーメーション時代における新たな展開,という6つの視点から考察を行った.

展望:基本的人権としての栄養や食物選択の自由を前提として,それらに何らかの介入を加えることの倫理性や社会的な正当性を考えることが必要である.また,食品企業等の経済活動に対して,国民の健康保護を目的として政府が介入を行う際には,その理論的根拠を考えつつ,食品選択に関して自己責任に委ね難い子ども等への特段の配慮が必要である.一方,デジタル技術を中心とした技術革新が急速に進む中で,新たな視点から食行動に関与する要因やメカニズムを理解し,社会におけるヘルスリテラシー促進の努力もさらに必要である.食と栄養の未来を予測しながら,新たな価値の創造につながるような健康教育やヘルスプロモーションの実践と研究を行いたいと考えている.

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© 2022 一般社団法人日本健康教育学会
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