2023 年 31 巻 1 号 p. 21-27
健康教育の基本は,伝えたいことが伝わり,伝えた相手が健康になれることであるが,多くの人は健康になるために何をすべきかは知っている.一方で専門職は業務の中でハイリスクアプローチ,早期発見,早期対応に傾倒するがあまり,ポピュレーションアプローチが社会にまん延する様々なリスクへのアプローチだという視点が弱い.なぜ知識があっても健康的な行動を実践できないか,リスクが何かがこれからの健康教育に不可欠な視点である.
以前から健康づくり,人づくりの基本はコミュニケーションと言われてきた.目から入る情報はわかったような気になるだけで,耳から入る情報は想像力を育み記憶に残ると言われるように,健康教育でも文部科学省も指摘しているように対話的な学びを心掛けることが求められている.最終的に聞き手や受け手のこころに響き,気が付けば健康になっている健康教育とは,正確な情報を伝えるだけではなく,聞き手が自分自身の現実を受容しつつできることを具現化し,教育する側が聞き手のことを大切に,大事にしていることが伝わることが求められている.すなわち,健康教育とは単に伝え手と聞き手の情報のやり取りだけではなく,最終的には健康づくりの基本となるソーシャルキャピタルの三要素である信頼・つながり・お互い様が感じられる場づくりと考えている.