日本健康教育学会誌
Online ISSN : 1884-5053
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31 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
新年のご挨拶
巻頭言
特集:第30回日本健康教育学会学術大会
  • 小橋 元
    2023 年 31 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー
  • 中村 正和, 江川 賢一
    2023 年 31 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー

    目的:本シンポジウムは,アクションリサーチ後の継続性や研究成果の転用のためのアドボカシーのあり方について議論を行い,エビデンスの社会実装という観点から両者の相互の関係性や役割についての理解を深めることを目的とした.

    方法:2人の研究者からのアクションリサーチや地域・社会的介入研究の事例紹介の後,研究後の事業の継続や研究成果の他地域への転用を論点として,アドボカシーの役割について討論した.

    結果:話題提供された事例は,住民主体の健康なまちづくりを目指したアクションリサーチ,身体活動の向上を目指した行政や住民と協働した地域介入研究と企業と連携した社会的介入研究であった.研究後の事業の継続のためにはアクションリサーチという研究手法の有用性が改めて確認された.アドボカシー活動として住民,行政に加えて議会関係者を対象とすることの必要性が示唆された.研究成果の他地域への転用を進めるためには,アクションリサーチの知見を増やすことに加えて,アクションリサーチの知見を転用できる人材の育成と配置が必要であることが確認された.

    結論:アクションリサーチは,組織や社会の変化を目指したアドボカシーの優れた研究手法であり,研究者と現場の関係者が協働してPDCAサイクルを回すことが活動の継続につながる.研究成果の他地域への転用を進めるためには,研究の推進と成果の可視化,成果を活用できる人材育成が必要である.

  • 鈴木 圭輔, 春山 康夫
    2023 年 31 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー

    近年,国内外では慢性疼痛および付随する原因不明の様々な症状は,中枢神経感作(以下,CS, central sensitization)に関する多くの研究が注目されている.CSとは身体から脊髄,脳幹部,視床,大脳(一次体性感覚野)に至る痛みの伝達経路の異常により,通常では痛くないはずの軽い刺激が疼痛として認識され,とても痛く感じたり,痛みが広がって感じたりする状態である.中枢神経感作に関連した痛みは,明るい光,触覚,騒音や温度(低・高い)に過敏性を示し,疲労,睡眠障害や集中力低下などを伴うことも少なくない.中枢神経感作には線維筋痛症,慢性疲労症候群,過敏性腸症候群,顎関節症のほか,レストレスレッグス症候群や頭痛などの疾患が関係している.一方,わが国においてはCSに関する知識はまだ普及されていないのは現状である.本稿では,1)慢性疼痛患者および神経疾患であるレストレスレッグス症候群や片頭痛とCSの関わりについて解説する.2)一般住民を対象にした疫学研究結果をもとにCSの保有率および影響因子を報告することを目的とする.

  • 岩室 紳也
    2023 年 31 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー

    健康教育の基本は,伝えたいことが伝わり,伝えた相手が健康になれることであるが,多くの人は健康になるために何をすべきかは知っている.一方で専門職は業務の中でハイリスクアプローチ,早期発見,早期対応に傾倒するがあまり,ポピュレーションアプローチが社会にまん延する様々なリスクへのアプローチだという視点が弱い.なぜ知識があっても健康的な行動を実践できないか,リスクが何かがこれからの健康教育に不可欠な視点である.

    以前から健康づくり,人づくりの基本はコミュニケーションと言われてきた.目から入る情報はわかったような気になるだけで,耳から入る情報は想像力を育み記憶に残ると言われるように,健康教育でも文部科学省も指摘しているように対話的な学びを心掛けることが求められている.最終的に聞き手や受け手のこころに響き,気が付けば健康になっている健康教育とは,正確な情報を伝えるだけではなく,聞き手が自分自身の現実を受容しつつできることを具現化し,教育する側が聞き手のことを大切に,大事にしていることが伝わることが求められている.すなわち,健康教育とは単に伝え手と聞き手の情報のやり取りだけではなく,最終的には健康づくりの基本となるソーシャルキャピタルの三要素である信頼・つながり・お互い様が感じられる場づくりと考えている.

特集:健康教育・ヘルスプロモーション研究のための方法論講座
  • 戸ヶ里 泰典
    2023 年 31 巻 1 号 p. 28-29
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー
  • 緒方 裕光
    2023 年 31 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/12
    ジャーナル フリー

    多くの科学分野においてP値に基づく統計的仮説検定は,主要な統計解析方法の1つとして広く使われている.しかし,近年この方法が持っている本質的な問題点が指摘されるようになってきている.2016年には,アメリカ統計学会(American Statistical Association, ASA)がP値の誤用や誤った解釈に対して警告を発している.

    現在一般的に用いられている統計的仮説検定の基本的な考え方は,Fisherが1920~1930年代に開発したものであり,それをのちにNeymanとPearsonが定式化した.この統計的仮説検定の中心的概念の1つがP値である.P値に基づく統計的仮説検定にはいくつかの本質的欠点があるものの,研究者や統計実務者にとって依然として非常に有用な方法である.また,現時点では,これに替わる有力な統計学的方法が確立されているとは言えない.したがって,統計的仮説検定を使う際には,この方法に対する理解を深めたうえで,誤用や間違った解釈に留意しつつ,可能な限り欠点を補う方法を採用していくことが望ましい.

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