目的:視覚障害者は,身体活動量が少ないことが報告されている.本研究では,参加者の身体活動実践の際の工夫と,その実践に必要だと考える支援についてのなまの声を,マルチレベルモデルを参考に各レベルに整理し,レベルに応じた介入計画を検討することを目的とした.
方法:成人視覚障害者10人を対象に,フォーカスグループインタビューを実施した.逐語録から切片化した情報を簡潔かつ適切なコードにまとめ,カテゴリーを作成した.
結果:身体活動実践の工夫は,個人内・個人的レベルでは【活動強度をあげる】など6個,個人間レベルでは【仲間との実践行動】など2個,組織,コミュニティ・地域レベルでは【団体への所属】の計9個のカテゴリーにまとめられた.身体活動実践のために必要な支援は,個人内・個人的レベルでは【自身の知識・スキル】など2個,個人間レベルでは【誘ってくれる仲間の存在】など3個,コミュニティ・地域レベルでは【介助なしで利用可能な施設】など7個,公共政策的レベルでは【地域の道路整備】の計13個のカテゴリーにまとめられた.
結論:視覚障害者の身体活動促進には,個人レベルの情報や個人への教育成果を当事者間で共有できるネットワークづくりが求められる.さらに,スポーツクラブなどの地域にある組織に対し,視覚障害者の身体活動促進を支援するための具体的なサービスやガイドの提案が必要であることが示唆された.