統計的多重性の問題と多重比較の方法は,データ解析における重要課題の1つである.1950年代から現在に至るまで,一元配置分散分析の結果に応じて複数群の平均値を比較する方法として,様々な多重比較の方法が開発されてきた.近年,臨床試験において複雑な研究デザインが用いられるようになり,統計的多重性の問題はさらに重要になっている.多重比較は統計的多重性の問題を解決するためのアプローチであり,研究の科学的意義を高めるためにも研究計画の段階から適切な多重比較の方法を選択する必要がある.本稿では,統計的多重性の問題の基本的考え方を述べるとともに,多重比較の代表的方法の特徴と留意点について概説する.