2023 年 31 巻 4 号 p. 265-272
これまでの研究により,質的研究論文を執筆および査読する際に用いることができるチェックリストが複数作成されている.本稿では論文執筆者や査読者が共通認識を持って質的研究論文に対峙できるようにするため,主要なチェックリストであるJARS-Qual(日本語版)を示し,チェックリストの使用に対する批判的な指摘も含めて要点を整理した.また,筆者がこれまでに実施してきた質的研究を通じての学びや経験をもとに,質的研究を実施する際の実践的なテクニックを報告する.質的研究と量的研究は,広く科学を捉えれば「普遍的真理を追究する」という共通の目的を志向している.研究者には質的研究と量的研究の双方を理解し,補完的・相乗的に両者を用いていくリテラシーとマインドが求められる.