研究成果を実社会で活用する社会実装が注目されている.たばこ対策は,喫煙の健康影響に関する研究成果を社会に還元し,健康被害を減らす取組である.たばこ対策はNCDs(Non-communicable diseases)対策のモデルと評価されるように,栄養や身体活動などの健康政策においても,たばこ対策から学べることは少なくない.具体的には,政策実現にむけた研究戦略手順,行動科学等の行動変容に関わる理論やモデルに基づく介入プログラムの開発,制度や法律等の変更を伴う環境整備を含む包括性の高い政策,政策化に必要なエビデンスの構築や政策実現後の評価を行う政策研究,政策実現のためのアドボカシー活動の重要性,本質的な障壁や圧力に対抗する根本的な対策の検討,枠組条約による国際的な協働の下での推進体制,などがある.
健康政策の質の向上を図るためには,健康政策に関わる研究者が分野横断的に交流を図り,政策の進め方を議論するとともに,政策実現にむけて協働することが必要である.また,日本で取組が遅れているアドボカシーについては,学問的基礎の確立や方法論の開発とともに,市民運動から学術団体までを含めたさまざまな組織や団体が協働するネットワークの構築が必要である.