日本健康医学会雑誌
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資料
高齢男性の回復期脳卒中片麻痺患者における排尿状態と非麻痺側上肢・下肢筋肉量との関係
鈴木 みゆき徳重 あつ子
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キーワード: 脳卒中, 筋肉量, 排尿
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2017 年 26 巻 2 号 p. 103-111

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抄録

研究目的は,高齢男性の回復期脳卒中片麻痺患者の排尿状態と非麻痺側筋肉量との関連を明らかにし,非麻痺側筋肉量との関係から排尿回数,尿意回数,失禁回数,トイレ誘導回数,トイレ排尿回数の意義を検討することである。

対象は,回復期リハビリテーション病棟に入院中の高齢男性の回復期脳卒中片麻痺患者8名である。研究方法は,入院2週目と10週目に排尿日誌を活用して排尿状態を把握するとともに生体電気インピーダンス法による筋肉量の測定を行い,その関係を分析した。その結果,初回調査では,非麻痺上肢筋肉量が失禁回数と負の相関関係(r=-0.88)にあり,トイレ誘導回数,トイレ排尿回数と正の相関関係(いずれもr=0.78)にあった。介助を受けながらであっても,失禁回数が少ないこと,トイレに誘導される回数が高いこと,実際にトイレで排尿する回数が多いことが,非麻痺側上肢筋肉量が多いことに関係していた。また,初回調査では,非麻痺側下肢筋肉量と尿意回数,トイレ誘導回数,トイレ排尿回数との間に有意な正の相関関係(r=0.82-0.88),失禁回数との間には負の相関関係(r=-0.89)が認められた。2回目調査では,非麻痺側下肢筋肉量と尿意回数,トイレ排尿回数との間で有意な正の相関関係(いずれもr=0.80),失禁回数とは負の相関関係(r=-0.94)が認められた。尿意があればあるほど非麻痺側下肢筋肉量が多くなる関係性があった。また,トイレに行けば行くほど非麻痺側下肢筋肉量が多くなる関係性も認められた。そして,失禁が少なければ少ないほど非麻痺側下肢筋肉量が多くなる関係性が明らかになった。

排尿行動は,移乗や移動,立ち上がり,立位保持,衣服の着脱などの多くの動作を含み,1日の中でも繰り返し行われる。失禁の有無に関わらず,介助を受けながらであっても,トイレに行き,排尿を試みる動作の回数が多いことが,非麻痺側筋肉量の多さの観点から有意義であることが示唆された。

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