みりん製造の圧搾工程で生じる副産物であるみりん粕の効率的な活用を促進するため,その機能性を検討した。本研究では,みりん粕のレジスタントプロテイン(RP)の含有量と胆汁酸吸着能を評価した。SDS-PAGEの結果,全てのみりん粕からRPが検出され,酒粕や米麹と共通するプロラミンであることが示唆された。また,みりん粕の総タンパク質濃度は酒粕と同程度であるものの,RPの濃縮度は酒粕より45.7-64.9%と低かった。また胆汁酸吸着能についても酒粕と比較すると44.7-62.8%と限定的であった。これは酒粕に含まれる酵母や乳酸菌の細胞壁成分が影響している可能性がある。しかし,本研究の結果から,みりん粕にも相当量のRP含有があり,胆汁酸吸着能も示されたことから,みりん粕は機能性食品素材としての十分な可能性があることを示すことができた。
就労している2型糖尿病患者(以下,就労2型糖尿病患者と表記する。)は,仕事が忙しい故に治療を受けないことや治療中断による症状の悪化が問題となっている。糖尿病は生活習慣病の一つであることから,糖尿病の治療には生活習慣の改善が求められる。本研究は,ワークストレスが生活習慣の悪化に及ぼす影響を検討することを目的として,40〜65歳の就労2型糖尿病患者791名(男性716名,女性75名,平均年齢52.27±7.87歳)を対象にweb調査を行った。共分散構造分析の結果,ワークストレスは直接的に不規則な食事を高め生活習慣を悪化させるとともに,仕事が忙しいために生活習慣が乱れるのは仕方がないと考える合理化を促進させることが明らかになった。また,この合理化は直接的に生活習慣改善への動機づけや病気悪化への不安を抑制させることがわかった。生活習慣改善への動機づけが低下することにより,食事バランスと運動習慣が抑制され,不規則な食事を促すという,糖尿病悪化に結びつくといえる。このことから,合理化は,ワークストレスが糖尿病悪化に結びつく中核的要因として機能していることがわかった。
本研究の目的は,子育て中の女性労働者の健康状態を定期健康診断の結果から明らかにすることである。2024年2月9日(金)~2月19日(月),未就学児を抱えながら仕事をしている18歳~49歳の女性にインターネット調査を実施した。調査項目は,年齢,家族構成,就業形態などの基本属性,過去1年間に受診した定期健康診断の結果である。得られたデータの基本統計量を算出した後,令和元年国民健康・栄養調査結果を用いて同年代の一般女性の健康診断結果と比較した。対象者の健康診断の検査項目の平均値は,いずれも基準範囲内だった。しかし,対象者のBMI, Hb, 空腹時血糖は,一般女性よりも有意に低い傾向があることが示された。また,子育て中の20歳代の女性労働者では,BMIの平均値が19.4と基準範囲内ではあるもののやや低く,HbA1cも有意に低いことが明らかになった。対象者の平均年齢が比較的若かったため,健康診断では大きな異常は認められなかったが,40歳代以降の疾病リスクを予防する観点から,早期の生活習慣改善が必要であると考えられた。
近年,非特異的腰痛においては心理的・社会的要因が関与している可能性があるといわれている。そこで今回,非特異的腰痛を有する者(腰痛群)85名(平均年齢22.4±5.3歳;19歳-48歳),と腰痛を有しない者(非腰痛群)85名(平均年齢20.6±2.3歳;19歳-38歳)の計170名を対象として,心理・社会的要因の評価を行った。評価尺度として,GHQ-12,患者用BS-POP,STAI(状態・特性不安検査;A-State,A-Trait)を用いた。GHQ-12における総得点の平均は腰痛群が27.3±5.6点,非腰痛群が23.8±5.8点であり,腰痛群が非腰痛群に比べて高値を示した(p<0.000)。患者用BS-POPにおける総得点の平均は腰痛群が17.2±3.1点,非腰痛群が15.7±2.6点であり,腰痛群が非腰痛群に比べて高値を示した(p=0.001)。STAI(A-State)における総得点の平均は腰痛群が45.8±9.2点,非腰痛群が44.0±9.8点であり,腰痛群が非腰痛群に比べて高値を示したが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.517)。STAI(A-Trait)における総得点の平均は腰痛群が49.5±9.3点,非腰痛群が47.0±8.9点であり,腰痛群が非腰痛群に比べて高値を示したが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.079)。今回,腰痛群と非腰痛群の心理的・社会的要因についてGHQ-12,患者用BS-POP,STAI(A-State),STAI(A-Trait)の4つの尺度を用いて検討した結果,合計得点の平均はいずれも腰痛群が非腰痛群に高値を示す傾向にあり,特にGHQ-12と患者用BS-POPでは統計的有意差がみられた。よって,非特異的腰痛を有する者には,心理・社会的要因の関与が示唆された。
宮崎県の自治体で実施された子宮頸がん集団バス検診受診者の年齢層および自治体の取り組みの効果を明らかにすることを目的とした。2市6町8944名(2022年度4395名,2023年度4549名)の受診者を対象とした。実施回数は160回(2022年度84回,2023年度76回)であった。新規受診者は394名(2022年度89名,2023年度305名),年齢の中央値は,全受診者60歳,新規受診者23歳であった。キャンパス検診を取り入れた自治体において新規受診者の増加と年齢の有意な低下がみられた。5自治体が週末検診を実施(2022年度11回,2023年度13回)していた。5自治体全体では平日検診と週末検診間で新規受診者数に違いはなかった。しかし,週末検診(3回の夕方検診を含む)を14回(全体22回)実施した自治体の新規受診者数は平日検診と比較して有意に多く,有意差はないが年齢も若い傾向にあった。また,同自治体の1検診あたりの受診者数は,週末検診119.7人,平日検診68.6人であった。受診者の年齢層の分布は,子宮頸がん罹患年齢層の分布よりも高かった。宮崎県全体で若い年齢層の受診者を増やすための事業が必要である。週末検診の積極的な導入は,新規受診者の増加と受診者年齢の低下に繋がる可能性がある。
2022年10月から2023年1月にかけて「周産期喪失における支援者育成のための連続講座」を計4回オンラインで実施した。周産期喪失に寄り添う支援者の抱える困難感を分析するため,講座参加者,第1回38名・第2回32名を対象とした事後アンケートの自由記述について質的分析を行い,カテゴリーを抽出した。参加者の内訳は,2回ともに約80%が助産師で,他は看護師,福祉職や保健師,医師であった。支援者の抱える困難感として,【手探りの支援】,【最善のケアが提供できないジレンマ】,【支援者の心理的葛藤】,【チーム医療の難しさ】,【家族支援の課題】,【整わない継続支援体制】が抽出された。周産期喪失のケアは,入院期間の短さから,母親はもちろん,他の家族との関わりの機会が非常に少ない。その中で,支援者は,受け入れ難い出来事を体験した対象者への支援や,関わりの少ない父親への支援に苦手意識や難しさを感じていると考えられる。また,支援者は,多忙な業務の中で,チーム一体となった支援ができないことにも葛藤を感じている。さらに,周産期喪失への直面は,支援者にとっても感情が揺さぶられる出来事であるにもかかわらず,支援者としての感情ルールに従おうとする自己と,個人としての感情に折り合いをつけることの難しさを,支援者は困難感として体験していることが考えられた。