日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
最新号
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原著(量的調査研究)
  • 岩永 誠, 大山 真貴子
    2023 年 32 巻 3 号 p. 351-359
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー

    自己の安定や精神的健康といった内的適応よりも,仕事や職場での人間関係を重視して外的適応に偏った状態が過剰適応である。これまで開発されてきた過剰適応を測定する尺度は,いずれも過剰適応への陥りやすさである傾向を測定する尺度であった。そこで本研究は,外的適応を偏重して内的適応とのバランスが崩れた状態である過剰適応状態を測定する尺度の作成を試みる。会社員および看護師907名を対象として調査を実施した。過剰適応状態尺度は,他者からの拒否回避,自己犠牲的労働,ワーカホリック,完璧な仕事遂行の4因子から構成されることがわかった。これらの因子のうち,他者からの拒否回避と自己犠牲的労働は過剰適応の外発的側面を,ワーカホリックと完璧な仕事遂行は内発的側面を表している。いずれの因子もCronbachのα係数は0.750以上であり,十分な内的一貫性が示された。成人用過剰適応傾向尺度との関連は中程度以下であることから,基準関連妥当性も認められることがわかった。因子により項目数が異なることから,各因子3項目からなる短縮版を作成し,原版と十分高い相関を示すことを確認した。

原著(文献レビュー)
  • 寺田 美樹, 吉岡 詠美
    2023 年 32 巻 3 号 p. 360-367
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル 認証あり

    精神科看護師および精神科訪問看護師が行う精神障害者の就労に関する支援についての現状を明らかにすることを目的に文献レビューを行った。医学中央雑誌Web版(Ver.5)を用いて,“精神看護”,“就労支援”,“障害者雇用”,“就労移行支援”,“就労継続支援”,“就労定着支援”,“作業所”,“障害者雇用援助”をキーワードとし,2004年9月~2023年3月までに初回登録された文献を検索し,21件をレビュー対象とした。結果として,1.精神科看護師および精神科訪問看護師は,精神障害者の就労支援において,多職種との連携の役割を担っているが十分役割を果たしていない可能性がある,2.看護師の就労に対する考え方で,就労支援が行われていない可能性がある,3.福祉的就労に関しては支援が行われやすいが,雇用契約を結ぶ就労先への就労支援は特に十分ではない,以上3点が明らかとなった。今後,精神科看護師および精神科訪問看護師の就労に対する考えを明らかにし,支援システムの構築が必要である。

原著(質的研究)
  • ─被災後7年後の語りから─
    及川 裕子, 日比野 直子, 滝沢 隆, 常盤 洋子
    2023 年 32 巻 3 号 p. 368-377
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー

    東日本大震災被災地に住む6名の女性を対象にして,2018年8月に震災直後から7年間の被災体験から復興期のメンタルヘルスを含む健康支援について明らかにすることを目的とした半構成的面接調査を行った。面接の録音内容を逐語録とし,質的データ分析法を用いて解析した結果,逐語録から抽出した180のコードを,«震災を経験して残る罪悪感と喪失感»,«甚大な津波被害に対する憤り»,«時間ともに風化していく震災の記憶と防災意識への焦り»,«家族や自宅やコミュニティが無事だったことで確保できた生活»,«災害時に活かせた暮らしの伝承に基づく家事知識と技への自負»,«過去の経験と今回の被災体験からの学びを伝えたい思い»,«災害から家族を守りたいという思い»,«震災を経験した活動で得られた充実感»の8カテゴリに集約し,これをさらに【震災を振り返ると沸き上がるネガティブな思い】,【震災直後から心の支えとなったコミュニティのつながりと世話役割】,【震災を経て得られた使命感と充実感】の3コアカテゴリに集約した。対象女性においては,社会とのつながりをもてる活動や世話役割が被災後の生活や精神面における支えとなっていた一方で,被災による喪失感も癒えていないことが明らかになった。以上より,災害後においては,悲嘆プロセスがたどれるような支援や女性が生活の張りを感じられるような環境の提供が必要であることが示唆された。

短報
  • ─第一報 看護学生を対象とした実験より─
    西村 美帆, 白鳥 さつき, 谷口 純平, 山幡 朗子, 伊藤 眞由美
    2023 年 32 巻 3 号 p. 378-384
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー

    危険薬曝露予防の一環として,輸液ボトルへびん針を穿刺する際のびん針穿刺部からの薬液漏出の有無と程度を明らかにするための実験を行った。対象者は全員が4年制看護大学に在籍し,基礎看護技術の点滴静脈内注射の演習で輸液ボトルへの薬液の注入,びん針の穿刺を経験していた4年生18名である。このうち,危険薬曝露予防に関する講義を受講した者は4名(22.2%)であった。実験では,模擬危険薬(ニコチン酸700 mg)が含まれる生理食塩液100 mLの入った輸液ボトル(プラスチックボトル,ソフトバッグ)を点滴処置台の上にゴム栓部を上にして置き,びん針を「上から下」へ穿刺した場合と,輸液ボトルのゴム栓部が下向きになるよう点滴処置台の輸液吊り下げバーに吊り下げ,「下から上」に向けて穿刺した際のびん針穿刺部からの薬液漏出量を測定した。結果は「上から下」への穿刺では,ソフトバッグで18名中2名(11.1%),プラスチックボトルが18名中1名(5.6%),「下から上」への穿刺ではソフトバッグで15名(83.3%),プラスチックボトルで4名(22.2%)が薬液漏出を認めた。身体特徴との関係では,ソフトバッグで「下から上」への穿刺時の薬液漏出量と利き腕上肢長の間に比較的強い正の相関(Pearson積率相関係数r=0.640,p=0.010)がみられた。

  • ─看護記録の分析より─
    佐々木 晶世, 青砥 恵美, 叶谷 由佳
    2023 年 32 巻 3 号 p. 385-389
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅における看取りの場の新たな形態として注目されているホスピス住宅入居者に対し訪問看護師が行っているアセスメントについて,看護記録の分析により実態を明らかにすることである。1法人が運営するホスピス住宅10施設のうち8施設において,2019年1月~2019年12月の期間の訪問看護サービスの利用における看護記録文書を対象とした。全921500件の看護記録から文字数250字以上の7422件に絞り込み,バイタルサインデータやケア内容などの客観的事実のみが記載されたものを除き,アセスメント(看護師の思考過程)の記載がある看護記録111を抽出した。分析にあたっては,意味内容を損なわないように個人情報に配慮してコード化し,KHcoder3を使用してテキストマイニングを行った。その結果,『排便コントロール』,『内服の管理』,『訪問時の確認』,『療養継続支援』,『状態悪化の把握』,『今後の療養生活への見通し』の6カテゴリーが示された。訪問看護師はホスピス住宅入居者に対し,症状コントロールや内服管理を実施し,訪問時に実際に観察することで状態の把握を行っていた。また,現在の支援だけでなく今後の療養生活への見通しを立て,記録に残していた。以上より,ホスピス住宅入居者をケアする訪問看護師は,全身状態を正確に判断するための観察と,入居者本人や家族,サービスに関わる多職種との連携が重要であると示唆された。

資料
  • ─シニアクラブ会員とまちづくりカフェ参加者の比較─
    小石 真子, 細田 武伸, 高田 美子, 阿部 真幸, 古谷 昭雄, 田中 富美子
    2023 年 32 巻 3 号 p. 390-396
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー

    通いの場である「シニアクラブ」または「まちづくりカフェ」に参加している高齢者600人に対して,フレイルの兆候,地域福祉活動としての生活支援活動との関わり,および生活満足度を明らかにするための質問紙調査を行った。回答者は515人(回答率85.8%)であり,うちシニアクラブ会員200人中159人,まちづくりカフェ会員400人中356人であった。通いの場への参加頻度は,「いつも参加」が,まちづくりカフェ会員に多かった。いずれの会員も,日常生活の中での運動や外出の実施が低かった。食生活については,シニアクラブ会員とまちづくりカフェ会員の間でフレイル兆候に差はなかった。その他の能力・活動では,まちづくりカフェ会員でフレイル兆候者が多かった。対象となった高齢者が提供している生活支援活動の内容として,全体では「安否確認」や「話し相手」などを実施している人が50%弱であり,さらにシニアクラブ会員では「災害時の避難の手助け」,まちづくりカフェ会員では「食事の差し入れ」が多かった。一方,高齢者が受領している生活支援活動の内容は,提供している生活支援活動に比べてどの内容も割合は低いものの,「安否確認」や「話し相手」が比較的多かった。生活満足度は10点満点で,男性7.05±1.72点,女性7.08±1.98点であり比較的高かった。フレイル非兆候者は,兆候者に比較して生活満足度が有意に高かった。

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