日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
原著
看護学生の領域別看護学実習への不安と基礎看護学実習の経験の認識との関連
田辺 幸子鈴木 英子中澤 沙織
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2020 年 28 巻 4 号 p. 376-393

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抄録

本研究の目的は,看護学生における領域別看護学実習への不安と基礎看護学実習の経験の認識との関連を明らかにすることである。

同じカリキュラムで進行する協力の得られた看護専門学校5校の看護学生436名を対象に,2016年6月~2016年7月の領域別看護学実習開始前に調査を実施した。領域別看護学実習に対する不安を評価するため,3因子(脅威的感情,挑戦的感情,有害な感情)17項目からなる臨床実習用ストレス尺度(鹿大版CSQ)などを用いた無記名自記式質問紙による横断研究を行なった。

436名の対象者に対し,回収数334名(回収率76.6%)であった。有効回答は321名(73.6%)であった。臨床実習用ストレス尺度(鹿大版CSQ)の3因子それぞれを目的変数として,重回帰分析を行ったところ,自由度調整済み決定係数は,脅威的感情を目的変数にした場合,R2=0.429であった。最も寄与の大きい説明変数は,「今後の領域別看護学実習で看護過程を展開することが不安である」であった。挑戦的感情を目的変数にした場合,R2=0.394であった。最も寄与が大きい説明変数は,「看護が好きである」であった。有害な感情を目的変数にした場合,R2=0.431であった。最も寄与が大きい説明変数は,「看護が好きではない」であった。

また,重回帰分析の結果より「基礎看護学実習の課題の量が適切ではなかった」「基礎看護学実習中に失敗をして辛い思いをした」「基礎看護学実習の到達度に満足していない」「グループメンバーとの関係性が良好でなかった」という基礎看護学実習の経験の認識が領域別看護学実習の不安に関連していると考えられた。

以上のことは,基礎看護学実習の経験から看護過程の展開への不安,コミュニケーションが得意ではないこと,看護が好きではないことが,領域別看護学実習での不安の関連要因であることを示している。したがって,基礎看護学実習終了後の看護学生への個々の到達度に合わせた支援をすることで領域別看護学実習への不安も軽減できると考える。

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