本研究は就労糖尿病患者を対象として,ワークストレスという環境要因,および合理化や楽観的態度といった心理的要因が生活習慣に影響し,その結果としてセルフケアの悪化に及ぼす影響過程を検討することを目的とした。データ解析対象者は40歳から65歳までの就労2型糖尿病患者592名(男性569名,女性23名)であった。共分散構造分析の結果,セルフケアに至る影響過程には2経路あることがわかった。第1は,ワークストレスとストレス反応が不規則な食事を促進させ,セルフケアの実施を抑制する経路である。第2は,ワークストレスがセルフケアをできなくても仕方ないという合理化(しなくてはいけないことができなかったことを正当化するという認知の歪みを指す)を促すことで病気への楽観的態度を高め,セルフケアの実施を抑制する経路である。このようにセルフケアを阻害する経路は,生活習慣を経る経路と不合理な認知的対処を経る経路からなることがわかった。