日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
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家族介護者が離職し親の介護生活を確立するまでの経験
田邉 綾子
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2022 年 30 巻 4 号 p. 510-516

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抄録

家族介護者が離職し親の介護生活を確立するまでの経験を明らかにすることを目的に,介護離職者5名の面接結果を質的統合法(KJ法)で分析した。

参加者らは,【仕事と介護による生活時間の切迫】があり,その結果【介護と仕事の両立をイメージできない状況】が見られた。その中で離職を選択したことは,【先を見据えて価値の置きどころを判断】する経験となっていた。また同時に親の【命の責任と介護の重みを感じる体験】を重ねていくことになった。その後,親を介護する生活は,【本人や介護仲間との繋がりの中にある喜び】を感じる経験に変化していた。その一方で【社会から取り残されて萎んでいく感覚】を感じる者もいることが明らかになった。

家族介護者にとって親の介護は,自らの生き方を問い直す機会となった。若年の介護者に対して,社会から取り残された感情を軽減できるように居場所づくりを支援する必要性が示唆された。

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