日本健康医学会雑誌
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糖尿病の心血管機能障害について(特別発言,<特集>第4回日本健康医学会総会)
野田 喜代一大野 和俊網元 愛子大沢 誠関 博人
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1995 年 4 巻 1 号 p. 27-30

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抄録

糖尿病の心血管機能の病態生理学的実体を知るために、明らかな臨床的心血管障害をみとめない、軽症の糖尿病者を対象として、その病態を心機図法によって解析した。その主要な結果は次の通りである。(1)心臓への静脈血還流量の増大によって心力と左心拍出量が増大し、左室仕事負担が著明に増大した。心拍出量の増大は大動脈起部抵抗の増大によって調整されており、全末梢抵抗と平均血圧の増大はなかった。すなわち、糖尿病性神経障害とくに血管運動神経障害は遅発するものと考えることができた。(2)末梢過潅流性および左室仕事負担の増大は高血圧症とほぼ同様で、これが冠硬化症、大動脈硬化症、不整脈、心不全など、糖尿病性大血管症を由来するものと考えることができた。そして、やがて心力が低下してくると、末梢抵抗が増大し、細小血管症を発現するという機序が推測された。(3)以上から、糖尿病の治療および生活管理にあたっては、早期から心血管機能の改善に配慮すべきであり、糖尿病はインスリン作用不足に由来する凡代謝障害と心血管機能障害を来たすことを主徴とする疾病であると考えることができた。

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© 1995 日本健康医学会
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