抄録
【はじめに】ホスピス、緩和ケア病棟におけるリハビリテーションの必要性や有効性を考える際、他職種からの評価も必要であるため、アンケート調査による検討を行ったので報告する。
【方法】近畿圏内緩和ケア病棟届出受理施設21施設を対象に、病棟に所属する医師、看護師、看護助手、薬剤師、管理栄養士、心理療法士、理学療法士、作業療法士、言語療法士を対象とし、リハビリテーションについて、その必要性、有効性、リスクを多項選択回答式にて、またリハビリに対する意見を文字記入回答形式にてアンケートを実施した。選択肢を「とてもそう思う」、「そう思う」、「どちらともいえない」、「あまり思わない」、「思わない」に設定した。
分析方法としては、必要性を感じている項目と現在の有効性を感じている項目について相関係数を求めた。また、「患者のQOLの向上に有効である」と回答したスタッフが、何を行えば患者のQOLの向上に有効であると感じるかを回帰分析にて予測値を求めた。
【結果及び考察】アンケート回収率は66.6%であった。「リハビリテーションの必要性や役割がある」については、とてもそう思う37.3%、そう思う56.2%、どちらともいえない5%であった。
必要性と有効性に相関関係がみられたものは、家族への心理サポート(r=0.68)、 浮腫の軽減(r=0.63)、患者の心理的サポート(r=0.63)、拘縮予防(r=0.61)、ポジショニング(r=0.61)、筋力・運動機能の維持・向上(r=0.55)、疼痛や苦痛の緩和(r=0.55)、患者のQOLの向上(r=0.53)、家族のQOLの向上(r=0.46)、ADLの維持・向上(r=0.43)であった。そのなかで患者のQOLの向上、ADLの維持・向上に対しては、必要性と有効性の両側面を感じていることを示していると思われた。また、筋力・運動機能の維持・向上やポジショニングについて、必要性は感じているが有効性にはばらつきがみられた。
次に回帰係数の分析から「患者のQOLの向上に有効である」と回答したスタッフについては、家族のQOLの向上(β=0.330) 、患者の心理的サポート(β=0.180) 、ADLの維持・向上(β=0.137)に有効であると感じられるリハビリテーションや患者の思いの表出(β=0.173)を重視したリハビリテーションを行えば患者のQOLの向上に有効であると感じることが予測された。また、家族の心理的サポート(β=-0.111)のみを重視したリハビリテーションを行うと患者のQOLの向上に有効とは思わないことが予測された。
今回の調査は、スタッフの意識に対するものであり、スタッフが有効性を感じるために、理学療法士として家族のQOLの向上や患者の心理的サポート、ADLの維持・向上を図り、患者が思いを表出できるように配慮することが必要であることが分かった。