抄録
【目的】リハビリテーション病院の機能を評価される一因として、在宅復帰率が挙げられる。当院でも、在宅復帰率向上の為、いくつかの対策を講じている。その中の一つに、患者様を担当する際、経験年数が中堅以下の理学療法士(以下;PT)は中堅以上の作業療法士(以下;OT)と組み、経験年数が中堅以下のOTは中堅以上のPTと組むようにしている。そこで、この対策が在宅復帰率に影響を与えているかを検証する。中堅の定義としては、経験年数5年目以上としている。
【方法】平成18年4月~平成19年3月までの1年間に退院された患者様67名(脳血管疾患32名 運動器疾患35名)の帰院先を1.在宅 2.施設 3.他病院 4.死亡の4つに分けた。この際の在宅とは、住民票登録可能な住居とし特別養護老人ホームも含めた。更に経験年数をA.PTの経験年数 B.OTの経験年数 C.PTとOTの経験年数を合わせた年数(以下;複合経験年数)の3つに分けた。PTの経験年数は1年目~10年目(13名)、OTの経験年数は1年目~17年目(11名)、複合経験年数は3年目~22年目であった。患者様ごとに担当PTと担当OTの経験年数を調べ、A~Cの経験年数ごとに在宅復帰率を算出し、経験年数と在宅復帰率の関係グラフを作成した。
【結果】PTについては、経験年数が多くなるに従い、在宅復帰率が高くなった(対数曲線:y=0.194In(x)+0.387)。OTについては、経験年数による在宅復帰率の違いはみられなかった(y=-0.02In(x)+0.758)。複合経験年数については、経験年数が多くなるに従い、在宅復帰率が高くなった(対数曲線:y=0.00In(x)+o.384)。
【考察】帰院先の決定には、PT・OTの経験年数だけでなく、介護力・経済力・本人や家族の意思など、多くの要因が絡み合っている。その為、PT・OTの経験年数だけでは、判断出来ない部分も多く含まれている。しかし、敢えて疾患名や患者様のバックグラウンドなどで分類せずに、セラピストの経験年数で在宅復帰率を比較した。そして、PTにおいては経験年数と在宅復帰率に大きな関連性がみられた。これは、帰院先決定の際に、基本動作能力の影響力が大きいということも考えられる。
【まとめ】今回の結果では、理学療法による基本動作能力が、在宅復帰可能かどうかの判断の際に、重要なものとなっていると推察出来る。しかし、今回はセラピストの経験年数の違いと、その技術や知識の違いを検証出来ていない。今後は、セラピストの経験年数とその能力の関連性を調べる必要がある。また、在宅復帰における関連要因として、経験年数以外のものも検証していく必要があると考えられる。