近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 20
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片麻痺患者における歩行時の重心移動と歩行速度の関係
*遠藤 城太郎大古 拓史村尾 佳美高尾 和孝片山 貴文大川 裕行江西 一成
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抄録
【はじめに】  正常歩行での重心移動は左右対称的であるが,片麻痺歩行においては左右非対称的な軌跡をたどるとの報告がみられる.片麻痺患者の重心移動は様々な機器を使用し分析が行なわれている.しかし現象の説明には有効であるものの,実際の臨床に結びつくような報告は少ない.  今回我々は,より臨床に結びつきやすい知見を得るために,歩行時における重心移動を前額面上において分析することを試みた.また設定された歩行速度と重心移動の関係についても検討したので報告する. 【対象】  研究に対する同意を得た59歳の男性1名とした.平成15年8月に脳梗塞(冠放線)を発症し右片麻痺を呈している.現在,当院で週3回の外来リハビリを継続中である.Br.Stageは上肢V,手指IV,下肢IV.歩行はプラスチック短下肢装具を使用し,自立レベルである.10m歩行速度は2.5Km/hであった.また口頭指示の理解が可能であり,高次脳障害・整形外科的疾患の既往はない. 【方法】  3次元解析装置(EvaRT4.0,マーカー位置;外後頭隆起,第7頚椎,第3腰椎,肩峰,上腕骨外側上顆,手関節背面中央,大転子,膝関節裂隙,外果,踵部,第5中足骨頭)を使用し,トレッドミル(Sports Art 6100E)上でサンプリング周波数120Hzにて30秒間記録した.その中から安定した6歩行周期を正規化平均加算し使用した.解析はKinema Tracer(キッセイコムテック株式会社製)を使用し,前額面上において麻痺側踵を原点としX軸(前額面),Y軸(矢状面),Z軸(垂直面)を設定した.そして背部より外後頭隆起,第7頚椎,第3腰椎のX座標の軌跡を導出し,それぞれ重心移動の最大振幅を計測した.トレッドミルの設定速度は1.5,2.0,2.5,3.0Km/hとし,設定速度ごとの最大振幅を比較した. 【結果】  速度変化に対し外後頭隆起,第7頚椎では有意な偏倚はみられなかった.しかし第3腰椎では,麻痺側・非麻痺側立脚時共に1.5Km/hに比べ2.5Km/hと3.0Km/hでは非麻痺側方向に有意に大きな偏倚がみられた.また,麻痺側立脚時には2.0Km/hに比べ2.5Km/hでは非麻痺側方向に有意に大きく偏倚がみられた. 【考察】  前額面上における片麻痺患者の歩行の特徴として,速度変化によって頭部・体幹上部の動きに変化はみられなかった.しかし,骨盤周囲では非麻痺側中心の歩行形態であり,ぶん回し様の歩容を行う為の代償動作であると考えられた.また結果から快適歩行速度以上の歩行を獲得するためには優位に非麻痺側荷重を行う必要があることが示唆された.  今回はPilot Studyであるが,この方法は重心移動を視覚的に確認でき,より臨床に結びつきやすい知見と考えられる.今後は症例数を増やしてより明確にしていきたい.
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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