抄録
【目的】
発育期における肘離断性骨軟骨炎(以下OCD)は、野
球肘の中でも重篤な障害であり、小学校高学年から中学
校低学年の発育期に初発する。今回我々は当院にてOCD
と診断され、骨軟骨移植術施行後に理学療法を受けた症
例について現在の経過を報告する。
【方法】
平成17年9月から平成19年4月までに当院を受診し、骨
軟骨移植術施行後に理学療法を受けた8名としました。
手術方法は、外側アプローチを用いて大腿骨外顆より骨
軟骨柱を採取し、くりぬいた肘の病巣部に採取した骨軟
骨柱を移植しました。肘については、術後三角巾のみで
固定してその中では自動運動を許可、膝については、48
時間アイシング安静後、術後3日目より歩行を許可しま
した。その間は一切固定は行わず、術後約2週間後に外
来理学療法を開始しました。
【結果】
術後2ヶ月までに肘屈曲約140度前後と正常可動域範囲、
肘伸展約0~-5度、回内外90度が可能となりました。ま
た膝についても術後2ヶ月までに膝完全屈曲がほぼ可能
となりました。筋力レベルは理学療法開始時にはすでに
肘・膝においても4~5レベルはありました。術後2ヶ月
後より競技復帰へと徐々にすすめていきました。
【考察】
術後生活レベルの負荷は許可しました。中学生から高
校生ということより家の事情により通勤は自転車が必要
な症例もおり、通学レベルでの自転車の負荷は退院後よ
り許可しました。また術後の固定がないために関節可動
域や筋力においてはスムーズに理学療法が行うことがで
きました。膝においては関節可動域訓練を行わずに正常
可動域を得ることができました。
競技復帰については、術後2ヶ月経過していること、
肘・膝可動域獲得、筋力獲得、固有感覚獲得、投球ホー
ム獲得等の条件が整ってから徐々に開始しました。まず
は学校の体育の授業の許可を行いました。
【まとめ】
主治医や本人・家族・チーム等の事情に応じて術後理
学療法をすすめた。負荷の設定については、主治医と相
談しながら医学的知見を踏まえてすすめた。今後の再発
予防としては、発育期におけるオーバーユースによるも
のであるため、基本的には練習日数と時間、そして投球
の制限が必要である。また全身の関節機能を使用するた
めに四肢や体幹からの運動連鎖や協調性を考慮した理学
療法が必要になってくる。