近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 72
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左片麻痺により膝の反張傾向を呈している患者に対してのアプローチ~重心移動と膝の反張傾向の関連性~
*赤木 誠
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抄録
【はじめに】麻痺側膝の反張傾向が観察されている患者に対してその改善に重点を置きアプローチを行った。その結果を以下に報告する。
【症例紹介】年齢:30代 男性  診断名:くも膜下出血後遺症、左片麻痺
現病歴:2006年2月発症。同年5月外来リハビリ開始。 既往歴:1989年脳動脈奇形破裂により左片麻痺。
【初期評価】ADLは自立、T-cane歩行自立。Brunnstorom recovery stage testでは左上肢V、左下肢V~VI、左手指VI、感覚検査では左右差なし。下肢粗大筋力は3+~4。筋緊張は麻痺側が非麻痺側に比べ弛緩。足クローヌス(-)、歩行後は(+)。歩行観察では麻痺側立脚期に体幹が麻痺側前外側方向へ偏移、立脚中期~後期にかけて麻痺側骨盤が後退・非麻痺側へ偏移し、膝に反張傾向が出現。
【経過】2週間ごとにアプローチを再検討した。まず、麻痺側股関節周囲筋群の筋出力向上、立位で下腿の前方移動を誘導、下腿三頭筋の緊張を抑制するアプローチを実施したが、著明な変化なし。次に麻痺側への重心移動、立位で立脚中期~後期のポジション設定を行い重心移動を意識し、膝関節のコントロールを促すと、意識下で膝の反張傾向を抑制可能となったが、持続性がなく無意識下でのコントロールは困難。上記アプローチを継続しながら側臥位・立位にて足部のコントロールを促すと、意識下で反張傾向を抑制することが可能、以前より持続性が向上。
【最終評価】機能的に著明な変化なし。足クローヌス(-)、歩行後は(±)となった。歩行観察では麻痺側立脚期での体幹偏移、麻痺側骨盤の後退・非麻痺側への偏移、膝の反張傾向は意識すると減少傾向にある。
【考察】理学療法開始時は結果的に個別にアプローチを行っており、改善は見られなかった。そこで、重心移動に伴う麻痺側膝関節のコントロールを促すと、持続性はないが比較的短時間で膝の反張傾向が減少した。床反力としては、ある関節の近辺を通過していればその関節まわりの筋活動は低く、遠くを通過すれば筋活動は高い。初期評価時は床反力が関節の遠位を通過し、過剰な筋活動、筋緊張の増加により膝の反張傾向を助長していたと考える。今回の症例では、重心移動を意識したアプローチにより、麻痺側立脚期での重心移動を確実に行い床反力を正常歩行に近づけることができた結果、過剰な筋活動、筋緊張の増加を防ぐことが可能となったために、膝の反張傾向を抑制することにつながったのではないかと考える。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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