近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 79
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脳血管疾患患者の歩行能力とバランス能力の経時的変化について
*小杉 正大垣 昌之
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キーワード: CVA, 歩行, 経時変化
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抄録
【はじめに】
 第46回近畿理学療法学術大会や第42回日本理学療法学術大会にて、脳血管疾患(以下CVA)患者の歩行自立度に影響を及ぼすバランス能力について、歩行自立群と非自立群とのバランス能力の違いや歩行自立度判定の判別式を得ることができたと報告を行った。しかし、その報告は横断的な研究結果より行っており、歩行能力の予後予測を行うには、経時変化をおった縦断的な研究をする必要がある。今回、歩行自立度とバランス能力の関係について、縦断的研究を行い、その結果に考察を交えて報告する。
【対象】
 平成19年4月1日~5月31日の間、当院に入院されていたCVA患者の内、歩行が自立しておらず、研究の趣旨を説明しご理解していただいた方、5名(年齢71.3±13.3歳、平均発症後期間125.7±45.3日)を対象とした。
【方法】
 歩行能力として、10m歩行を行い、歩行時間や歩数を測定し、歩行速度(x1)(m/s)を求めた。バランス能力の評価は、Finger Floor Distance(以下FFD)(cm)を座位(X2)、立位姿勢(X3)で片脚立位保持時間(秒)を非麻痺側下肢支持(X4)、麻痺側下肢支持(X5)で、最大荷重率を麻痺側下肢支持(X6)で、それぞれ測定を行った。各項目について2回施行し平均値をとった。また第42回日本理学療法学術大会で報告した歩行自立度判別式 (z=2.59*X1+0.07*X2+0.03*X3+0.02*X4-0.02*X5+0.74*X6-2.00。Z>0を歩行自立とする)を用い、その経時的変化も調べた。評価は2週間に1回行った。
【結果】
 測定結果のうち、歩行自立度判別式の値の経時的変化について述べる。歩行自立度判別式Zは今回、対象とした5名のうち、2名において、評価開始時よりZ>0となった。また1名が途中で自立していないのにZ>0となった。以上のように、歩行自立度判別式により5名中3名で、歩行が自立していないのに、自立と判別される結果となった。
【考察】
 今回、歩行自立度判別式の経時変化において、歩行自立度判別の正誤が4割と低くなった。その原因として、対象が5名と少なく、母集団としては不十分であること、判別式の妥当性や精度の問題、またこの判別式は、対象の発症後期間に大きなばらつきがある中で得られたものであり、縦断的研究で使用していくには、発症早期で発症後期間のばらつきの少ない中で判別式を求める必要があることが考えられる。特に、縦断的研究においては、二木による早期自立度予測で最終自立度は4段階になると示されたように、歩行能力も経時的にいくつかの変化を示すと考えられる。そのため、歩行能力とバランス能力の縦断的研究において、歩行能力、バランス能力の経時的変化を蓄積し、その変化を分析し、歩行自立度判定の精度の向上や歩行能力の予後予測につなげていく必要がある。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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