近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 95
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当院における糖尿病教育入院への理学療法士のかかわり
高齢者を対象にした具体的対策
*山本 静香中本 千映子澤下 浩二坂井 誠
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抄録
【はじめに】我々は、平成16年8月より当院に開設された糖尿病センターにおける教育入院の運動療法指導に関与している。介入当初は集団指導のみ行っていたが、対象者に高齢者が多く、指導内容の受け入れに可否が見られ、指導方法・内容に再考を要した。そこで、今回、対象者の約半数を占める65歳以上の高齢者についてまとめ、具体的な実施内容と今後の課題を報告する。〈BR〉 【教育入院の対象者】平成18年1月から平成19年5月の初回教育入院対象者84名のうち、65歳以上は計39名(男性16、女性23名)と4.6割を占めた。病型分類は全員2型。平均罹患期間は7.1年(0~33年)。平均BMIは24.3%。運動療法に支障となる整形疾患は頸部・腰部脊椎ヘルニア、変形性膝関節症を多く合併。日常生活以外の運動習慣は、無し、または散歩程度が多く、現状の運動量が十分でないと認識しているものが多かった。〈BR〉 【指導実施内容】毎月1回の教育入院において最大4名の対象者に5日間、毎日1時間の指導を行う。指導担当は理学療法士(以下、PT)が交代制で行い、問診を主とする評価、集団にて運動療法の知識教育、運動指導後、個人の問題点を把握して個別指導で具体的な運動内容を提示し、最終確認のうえ終了している。〈BR〉 【実施時の問題と具体的対策】糖尿病の発症率は60歳以上で増加すると言われているが、当院でも65歳以上の高齢者が全体の約半数を占めていた。運動習慣が少なく、動機付けが困難、他疾患の合併が高率、当院の地域特性として住居周囲に坂が多く、生活環境により運動内容に制限が生じるなど、高齢者特有のバリア要因について検討を要した。そこで、多くが初回入院のため、運動効果・弊害に対する理解を深める基礎講義、同世代の他者と共感を得やすい集団での運動指導を実施した。また、簡便な質問表を作成し、生活状況や糖尿病療養に対する自己認識の確認後、合併症や地域性を考慮した個別運動内容を提案している。終了時には運動継続を促すためそれらの指導内容を書面作成し、手渡している。さらに入院が継続する場合には、引き続き個別指導を行っている。また、PT側の療養指導に対する知識・技術水準の統一化を図るため、PT間や他職種間での院内勉強会の実施、研修会等への積極的参加、カルテからの情報収集を全員で行い、患者情報の共有化に努めている。〈BR〉 【おわりに】上記の対策により、指導者側の知識・技術の向上と対象者側の運動療法に対する動機付けや実生活に即した運動内容の指導が可能になったと考える。しかし、現時点では退院後の指導継続ができていないため客観的な効果判定を行えるよう介入の必要がある。また、今後、合併が増加するであろう認知症、重度身体障害者、薬剤性糖尿病などの症例に対する介入システムの構築も今後の課題として検討していく必要がある。〈BR〉
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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