近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 96
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OASIS分類を用いたリハビリテーション専門病棟における転倒・転落特性調査
おあしすぶんるいをもちいたりはびりてーしょんせんもんびょうとうにおけるてんとうてんらくとくせいちょうさ
*高取 克彦庄本 康治梛野 浩司徳久 謙太郎岡田 洋平生野 公貴鶴田 佳世
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抄録
【目的】急性期,一般病棟に比較して,回復期~維持期脳卒中ケアを中心としたリハビリテーション病棟における転倒・転落は高頻度で生じることが知られている(13.8-15.9転倒/1000患者・日)。転倒による外傷や心理的ダメージは,在宅復帰を遅らせる大きな要因となり,入院を長期化させる可能性が高い。施設内転倒に対する予防的介入を実施するには,入院患者の転倒特性を把握しておく必要がある。本研究の目的は,転倒の原因に注目した分類であるOASIS分類を用いて,リハビリテーション専門病棟で生じた転倒・転落事故の特性および原因動作の自立度との関係を調査することである。
【方法】平成18年4月から平成19年3月末までの1年間にNリハビリテーション病院の回復期病棟および療養病棟に入院した患者118名を対象とした。医療安全委員会に報告された事故報告書を基に,年齢,性別,疾患(脳血管・運動器疾患・その他),転倒回数,転倒原因,転倒時間,年間転倒発生率,外傷の有無を調査した。転倒の定義はFICSIT研究の定義を用いた。転倒原因の調査にはOASIS分類を用いて分類し,また転倒原因動作が自立判定なされていた動作であったかどうかも併せて調査した。尚,観察期間中の転倒発生率は(転倒件数/延べ入院患者数×平均在院日数)×1000で算出した。
【結果】観察期間中の転倒報告は226件であり,男性132件(58.4%),女性92件(41.6%)であった。そのうち,外傷を生じた転倒は31件(13.7%)あり骨折などの重篤な外傷は2件(0.8%)生じていた。OASIS分類では外因転倒:extrinsic fallが7件(3%),内因転倒:intrinsic fallが126件(55.8%),転落:non-bipedal fallが77件(34%),分類不能:non-classifiableが16件(7%)であった。外因転倒原因にはスリップが最も多く(3件),内因転倒では認知機能障害が最も多かった(92件)。転落は自発的動作に関わる転落が最も多かった(61件)。原因動作と自立度との関係では要介助レベルが最も多かったが134件(59.3%),自立判定されている動作による転倒は33件(14.6%)と2番目に多かった。観察期間中の転倒発生率は5.2転倒/1000患者・日であった。
【考察】一般的に転倒・転落事故調査では,その有無や回数,発生場所,時間などを中心に行われることが多い。OASIS分類は調査者間の再現性が良好であることが先行研究により示されており,バランス不良や判断ミスなどの直接原因を詳細に分類可能なため,再転倒を防ぐ予防的対策に有用な評価指標であると考えられる。また,自立判定がなされている動作での転倒が比較的多かったことは,これらの動作における安全性を再評価する必要性を示しているものと思われる。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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