近畿理学療法学術大会
第47回近畿理学療法学術大会
セッションID: 99
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情動の変化によって姿勢動揺は変化するのか?
-地域在住高齢者における検討、および転倒との関係-
*山田 実上原 稔章
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キーワード: 情動, 姿勢動揺, 転倒
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抄録
【目的】虚弱高齢者では、立位や歩行が行える能力を有していても、恐怖心や不安感によって動作が阻害されている場合がある。臨床的に、このような場合、平行棒や歩行器、杖などの歩行補助具を用いることで、容易に立位保持や歩行を行うことが可能になることを経験する。さらに興味深いことに、それら用具や補助具を必ずしも把持しなくとも、平行棒内にいるという安心感によって立位、歩行が可能となる場合も少なくない。そこで、本研究では、このような情動の変化が姿勢動揺に及ぼす影響を検討し、さらにこの姿勢動揺の変化が転倒とどのような関係にあるのかを検討した。 【方法】対象は要支援から要介護2までの虚弱高齢者40名であった。加速度計を用いて(A)支持物の何もない平地立位と(B)平行棒内との2条件で姿勢動揺を測定した。なお、平行棒内では「転びそうになったら平行棒を把持してください」という指示は与えたが、実際に体の一部分でも触れた場合には再測定を行った。加速度センサは第3腰椎部に装着し、各条件とも30秒間の計測を行い、得られた加速度信号よりRMSを求め姿勢動揺の指標とした。条件(B)のRMSから条件(A)のRMSへの変化量(ΔRMS)を求めた。また、それぞれの条件において情動面でどのように感じたのかを内省報告として聞き取りを行った。なお、測定日より前向きに6ヶ月間の転倒調査を行い、転倒群と非転倒群に分類した。統計解析としては、条件(A)と条件(B)でRMSを比較した。また、転倒群、非転倒群でRMSおよびΔRMSを比較した。さらに判別分析、ROC曲線を用いて転倒を判別(予測)するカットオフ値を求めた。 【結果】条件(A)では、条件(B)と比較して、有意にRMSが大きくなっていた(p<0.05)。内省報告として、条件(A)では「怖い」、「不安」などネガティブな報告が目立ったのに対し、条件(B)では「安心」、「落ち着く」などポジティブな報告が目立った。転倒群では非転倒群と比較して、条件(A)で有意にRMSが増大していたが、条件(B)では差を認めなかった。ΔRMSは転倒群で有意に大きくなっていた(p<0.05)。判別分析の結果、ΔRMSが113%でカットオフ値となり正答率は72.5%であった。なお、ROC曲線の曲線下面積は0.801であった。 【考察】虚弱高齢者では、不安感、恐怖心を抱いた条件(A)において姿勢動揺が大きくなり、逆に安心感を抱いた条件(B)では姿勢動揺が減少した。また、高齢者の転倒には恐怖心による姿勢動揺の増大が関与していた。物理的な変化がなく、情動面の変化で姿勢動揺が大きくなり、転倒に関与していたことは非常に興味深く、今後の転倒予防に重要な情報である。 【まとめ】情動の変化によって姿勢動揺は変化し、これは転倒に関与していた。
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© 2007 社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
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