近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 14
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立位における一側下肢への側方体重移動が足底圧中心位置と前脛骨筋に及ぼす影響
*中道 哲朗山口 剛司渡邊 裕文鈴木 俊明
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抄録

【はじめに】
 変形性膝関節症(以下膝OA)患者の歩行では、立脚初期に膝関節外側動揺(以下lateral thrust)が頻繁に認められる。この制御には、大殿筋下部線維、大内転筋および前脛骨筋の関与が報告されている。このなかで大殿筋下部線維、大内転筋については閉鎖性運動連鎖における機能が多く報告されているが、前脛骨筋についての報告は散見される程度である。そこで今回、閉鎖性運動連鎖における前脛骨筋の機能を検討し運動療法に応用するため、足底圧中心位置(以下COP:Center of Pressure)と筋電図学的評価を用いて分析、検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は整形外科学的、神経学的に問題のない健常者8名8肢(男性7名、女性1名)の利き足(右下肢)とした。まず、被験者の利き足側を重心計(ユニメック社製)のプレート上に置き、立位姿勢をとらせた。足部位置は、足長および足の横幅の中央をプレート中央に合わせて接地させ、横幅は踵骨の中心と第2・3趾間を結ぶ線で二等分した。測定課題は、立位姿勢を開始肢位とし、そこから利き足側(以下移動側)への側方体重移動とした。測定項目は、移動側足部内のCOP(以下COP)と移動側前脛骨筋および足部内反筋群(後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋)の筋電図波形(キッセイコムテック社製)を記録した。測定課題中の規定は、移動側・非移動側の足底は接地させ、体幹・骨盤の回旋運動を最小限にし、視線は前方を注視させた。側方移動距離は、規定内で各被験者が最大に移動できる距離とし、最大移動した後、開始肢位である立位姿勢に戻るまでを1回とした。この測定課題を連続的に3回実施することを1施行とし、計3施行測定した。分析方法は、COP軌跡の時間的変化とそれに伴う前脛骨筋および足部内反筋群の筋活動のパターンを分析した。なお、被験者には本研究の目的・方法を説明し同意を得た。
【結果】
 測定課題中のCOPは、側方体重移動に伴い足部外側方向へ移動した。また筋電図学的評価では、COPの足部外側方向への移動開始と同時期に、足部内反筋群が活動し、その直後に前脛骨筋が活動する傾向がみられた。また足部内反筋群、前脛骨筋の筋活動は、COPの足部外側方向への移動に伴い増加傾向を示した。
【考察とまとめ】
 本研究の測定課題は、移動側への側方体重移動時にCOPが足部外側方向へ移動し、これに伴い下腿は外側へ傾斜すると考えられる。足部内反筋群および前脛骨筋は、この下腿の外側傾斜を制動する目的で活動すると考えられる。このことから、立位での側方体重移動は、本測定課題と同様の規定で実施することを前提に、前脛骨筋による下腿外側傾斜の制動作用を促すことができると考えられる。そして臨床では、lateral thrustを呈する膝OA患者に対し、ステップや歩行練習へと移行する前段階の運動療法として有用であると考えられる。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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