近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 43
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脳卒中動作能力尺度 Stroke Performance Scaleの構成概念妥当性の検討
*徳久 謙太郎河村 隆史三好 拓宏門田 拓畑 寿継林 拓児鶴田 佳世小嶌 康介兼松 大和藤村 純矢梛野 浩司高取 克彦庄本 康治
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抄録
【目的】日常生活動作(ADL)は歩行や方向転換、リーチ動作といった多くのパフォーマンスの集合体であり、特に立位・歩行時のパフォーマンス評価は、自立度判定や転倒防止に資する重要な情報である。そこで我々は脳卒中片麻痺患者によるADLの遂行に必要な身体的パフォーマンス、12立位項目、8移動項目の全20項目(80点)から構成される、脳卒中動作能力尺度(Stroke Performance Scale: SPS)を開発し、その一次元性や信頼性といった測定特性について報告してきた。本研究の目的は、障害構造におけるSPSの構成概念妥当性について、相関分析および共分散構造分析を用いて検討することである。
【対象・方法】対象は3施設の回復期病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者62名(男性43名、女性19名、年齢70.3±10.0歳)である。参加基準は口頭指示理解が可能、軽介助下で立位保持可能なものとした。SPS評価後1週間以内に、運動機能の指標としてBrunnstrom recovery stage test(BRS)を、身体的パフォーマンスの指標としてFunctional Reach test(FR)、10mの最大歩行速度(MWS)、Timed Up and Go test(TUG)を、ADL能力の指標としてFunctional Independence Measure運動項目(FIM-M)といった関連する尺度の評価を行なった。解析は、まず各尺度間の相関をSpearman順位相関係数にて検討した。次に全ての尺度が測定可能であった52名を対象に、多重指標モデルによる共分散構造分析を行なった。仮定したパス図は、SPS、FR、MWS、TUGの観測変数に影響する潜在変数の「身体的パフォーマンス」が、FIM-Mに影響する潜在変数「ADL能力」に影響を与える構造とした。なお有意水準は5_%_とした。
【結果】SPSの評価結果は平均51.8±27.0(1-80)点であった。相関分析において、SPSは他の尺度と有意なかなりの相関(ρ=0.48-0.80, p<0.05)がみられた。またFIM-Mとの相関が最も低いのはBRS(ρ=0.31)であり、最も高いのはSPS(ρ=0.76)であった。共分散構造分析では、全て有意な標準化推定値が得られた(p<0.05)。「身体的パフォーマンス」から各尺度への標準化係数の絶対値はSPS(0.90)、MWS(0.80)、FR(0.75)、TUG(0.68)の順に高値を示した。「ADL能力」への標準化係数は0.81と高値を示した。適合度指標はGFI=0.94、AGFI=0.83、CFI=0.98、RMSEA=0.11であり、適合は十分とはいえなかった。
【考察】SPSは身体的パフォーマンスの変化を最もよく表す尺度であり、ADL能力と最も強い関係があることが示唆された。また、身体的パフォーマンスはADL能力に強い影響を与えることが確認できた。しかし今回のモデルの適合は十分とはいえないことから、対象者数の増加や他の尺度の追加などにより、さらに適合の良いモデルでの検討が必要である。
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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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