抄録
【目的】
脳卒中患者にとって、麻痺側下肢の支持性の低下は、日常生活における様々な動作に影響を与える大きな問題の1つである。脳卒中患者における麻痺側下肢の支持性の評価は、Force Plateのような機器を用いて最大荷重率として評価することが多く、先行研究においてこれらの再現性は良好であったと報告されている。しかし、これらの評価方法は大掛かりで高価な機器を要するため、臨床的簡便性は低い。
脳卒中患者にとって、非麻痺側へのサイドステップは麻痺側下肢の支持性が要求される動作である。先行研究において、非麻痺側へのサイドステップ動作を麻痺側下肢の支持性の評価として使用しているものはほんどない。本研究の目的は、脳卒中患者において、非麻痺側へのサイドステップ動作を用いたSide Step Test(SST)と麻痺側下肢支持性、歩行能力および日常生活動作能力との並存的妥当性について検討することである。
【方法】
対象は24名の脳卒中患者(年齢:69.6±10.2歳、Brunnstrom stage 3:3名、4:10名、5:6名、6:4名、発症後経過:3.9±6.1年)であった。調査項目は、麻痺側下肢支持性の評価として、最大荷重率(最大荷重量/体重×100、単位:_%_)およびSST、歩行能力の評価として、歩行自立度、歩行速度、歩幅、日常生活動作能力の評価としてBarthel Index(BI)とした。最大荷重率は、TETRAX(Sunlight Medical Ltd.)を用いて、先行研究におけるForce Plateによる測定方法に準じて評価した。SSTにおいて、対象者は閉脚立位から麻痺側下肢で支持して、非麻痺側への最大サイドステップを実施し、その際の最大サイドステップ長を、2回練習後3回測定した。そして、3回の測定値の平均値を下肢長で除して補正を行った。歩行自立度はFIM-移動スコアにより評価し、6以上を歩行自立群、5以下を非自立群とした。データ解析は、SSTと最大荷重率および歩行速度、歩幅、BIとの関係についてはspearmanの順位相関係数、SSTの歩行自立・非自立の群間比較にはwilcoxon順位和検定を用いて行った。
【結果】
対象者の最大荷重率は62.15±12.88(%)、SSTは0.98±0.35、歩行速度は0.87±0.56 (m/s)、歩幅は0.43±0.16(m)、BIは86.14±12.62であった。歩行自立群は15名、非自立群は9名であった。SSTは最大荷重率(ρ=0.51、p=0.01)、歩行速度(ρ=0.70、p<0.001)、歩幅(ρ=0.68、p<0.001)、BI(ρ=0.64、p=0.0014)と中等度の相関関係を示した。 歩行自立群は非自立群と比較して、SSTは有意に高い値を示した(p=0.015)。
【まとめ】
脳卒中患者において、SSTの麻痺側下肢支持性、歩行能力および日常生活動作能力との並存的妥当性が確認された。先行研究において、我々は脳卒中患者におけるSSTの良好な検者内・検者間再現性について確認しており、今回の結果からSSTは脳卒中片麻痺患者における麻痺側下肢支持性の評価として有用である可能性が示唆された。