近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 61
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人工股関節全置換術後患者における下肢筋力の回復過程
-健常者との比較-
*福元 喜啓大畑 光司塚越 累木村 みさか真多 俊博市橋 則明
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抄録
【はじめに】人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty,以下THA)後における下肢筋力の回復を調べた研究では,股関節周囲筋力を対象とした報告が数多くなされている。一方,膝伸展筋力については,術後早期には股関節周囲筋と比べ回復が遅延すると報告されているにも関わらず,退院後の経過を追った報告や,筋力を健常者と比較した報告は見当たらない。本研究の目的は,THA後の股関節周囲筋力および膝伸展筋力を術前から術後6ヶ月まで追跡し,筋による回復の違いの検討,および健常者との比較を行うことである。
【対象】対象は,変形性股関節症に対し初回片側THAを受けた女性患者18例(平均年齢62.3±6.2歳,身長152.2±6.8cm,体重52.2±7.6kg,以下THA群),および健常女性18例(平均年齢63.2±4.4歳,身長152.9±4.6cm,体重52.5±6.1kg,以下健常群)とした。両群間で年齢,身長,体重に有意差はなかった。対象者には研究の内容を説明し,参加することの同意を得た。
【方法】THA群では術側,健常群では右側の股関節伸展,外転,および膝関節伸展の最大等尺性筋力を,Hand-Held Dynamometer(アニマ社製)を用い測定した。測定肢位は,股伸展筋力では股内外転0°位の腹臥位,股外転筋力では股内外転0°位の背臥位とし,膝伸展筋力では股,膝屈曲90°位の端坐位とした。測定はそれぞれ2回行い,高い値をデータとして用い,得られた筋力値をトルク体重比(Nm/kg)で表した。また,健常群の平均筋力値を基準値(100_%_)としたTHA群の値(以下,健常比)を算出した。THA群の測定時期は,術前,術後4週,6ヶ月経過時点とした。統計処理として,反復測定分散分析および多重比較を用い,THA群の筋力値,健常比の比較を行なった。統計学的検定の有意水準は5_%_未満とした。
【結果と考察】THA群の股伸展筋力と股外転筋力は,術後4週では術前と同程度であり,術後6ヶ月では術前,術後4週よりも有意に増加していた。一方,膝伸展筋力は,術後4週では術前と比較し有意に低下し,術後6ヵ月には術前よりも有意に増加していた。股伸展,股外転,膝伸展の健常比はそれぞれ,術前では50%,51%,59_%_に対して,術後4週では52_%_,53_%_,39_%_であり,術後早期には股関節周囲筋よりも膝伸展筋力の回復が遅延していた。しかし,術後6ヶ月では71%,73%,71_%_と有意な差は認められず,筋力回復の程度は同じであることが示唆された。また,術後6ヶ月を経過してもすべての筋力値が健常群より低く,長期的な筋力低下が生じていることが明らかとなった。
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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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