近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 86
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超高齢者における足底知覚学習が立位重心動揺に及ぼす影響
*藤田 浩之河村 隆史和田 善行半田 学良林 拓児徳田 光紀小川 祐水森岡 周
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抄録

【目的】
立位を保持する上で足底からの体性感覚は必要不可欠な情報の一つである。過去の研究より健常者、高齢者、脳卒中患者において足底部の知覚向上により立位バランスが向上することが報告されている。現在、平均寿命の長寿が進む中、80歳を越える超高齢者に対して積極的なリハビリテーションを行うことも珍しくはない。しかし、超高齢者を対象とした前述のような研究はされていない。本研究では超高齢者に対して、高齢者、健常者と同様に足底知覚弁別の学習効果が期待できるか、そして立位姿勢バランスの安定化に効果をもたらすかについて検討する。
【方法】
意識障害のない、静止立位が可能な施設に入所している超高齢者7名を対象とし、すべての被験者に対して実験の説明と共に参加の同意を得た。足底知覚弁別課題として、5段階の硬度の異なるスポンジマットを使用し、立位にて足底で硬度を弁別する課題を行った。それぞれの硬度のスポンジマットをランダムに2回ずつ用いて計10回の足底知覚弁別表を作成し、それに従いトレーニングを10日間実施した。毎回のトレーニング前には5段階の硬度を足底にて記憶させたのち課題に望んだ。なお、トレーニングの結果の正誤の結果の知識は与えなかった。日々の弁別課題の誤差数を導出し、学習の効果とした。また、静止立位時における動揺の変化を見るために、トレーニングの実施前と終了後において開眼及び閉眼条件にてグラビレコーダーにて重心動揺値を測定した。統計分析には弁別トレーニングの開始時と終了時の重心動揺の総軌跡長をウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて行った。同時に、日数経過と足底知覚学習の相関関係を見るためにスピアマンの相関分析を用い、有意水準を5_%_未満とした。
【結果】
被験者7名の誤判断数の平均値は日数の経過を重ねるごとに有意な減少を認められた。また、誤差数と日数の相関関係についても有意な相関を認めた(相関係数:-0.83)。トレーニング前と終了時の重心動揺値における総軌跡長の結果においては、トレーニング終了時の開眼、閉眼両条件において有意な減少が認められた(p<0.05)。
【考察】
超高齢者においても知覚弁別課題による足底知覚の学習が期待でき、その学習効果によって、静止立位保持における重心動揺の減少に影響を示したことが示唆された。加齢によりバランスが低下する超高齢者において、筋力、認知機能と同様に足底からの求心性感覚情報の減少がみられるといわれている。しかし、トレーニングによって高められた知覚能力が高まることで足底からの感覚情報の向上に関与し、姿勢バランスに寄与したと考える。
【まとめ】
今回用いた足底部の知覚学習課題は、足底へ注意を促すことで簡便かつ有効な立位姿勢バランストレーニングとして、超高齢者に対しても適応可能であることが示唆された。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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