近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 87
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腰痛保有者における骨盤周囲筋の筋活動
-表面筋電図を用いての検討-
*佐藤 伸明水島 健太郎速水 誠木澤 清行
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キーワード: 腰痛, 大殿筋, 表面筋電図
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抄録

【目的】健常者と腰痛保有者における骨盤周囲の筋活動の比較検討は少ない。そこで我々は非腰痛群と腰痛群において、表面筋電図を用いて体幹前屈動作における脊柱起立筋(LES)、多裂筋(MU)腹直筋(RA)、大殿筋(GM)の筋活動の比較検討を行った。

【対象と方法】対象は男性20名(22歳~33歳、平均29.1歳)で、日常生活動作において腰痛を有する腰痛群10名(P群)と非腰痛群10名(N群)の2群に分けた。各対象者には本研究の主旨と目的を説明し、研究参加への同意を得た。表面筋電図の測定には日本光電社製マルチテレメーターシステムWEB-5500を使用し、導出筋はLES、MU、RA、GMとした。測定方法は10°体幹前屈位、30°体幹前屈位と、おもり(体重の10%)を負荷した10°体幹前屈位、30°体幹前屈位とし、各動作を5秒間保持させた。各導出筋において最大等尺性収縮を施行し最大随意収縮(MVC)を算出した。各動作で得た筋活動から中間3秒間の筋活動をMVCで除して%MVCを算出し、それぞれの動作間での各筋の%MVCの比較を行った。なお、全ての動作で腰痛は出現しなかった。統計処理はスチューデント、ウェルチのt検定とマン・ホイットニ検定を使用し、有意水準を5%未満とした。

【結果】10°前屈位、30°前屈位の_%_MVC比較ではLES、MU、RA、GMのすべてにおいて有意差は認められなかった。負荷10°前屈位においてはGMのみP群9.16%、N群13.18%とP群で有意に低値(p<0.05)を示し、LESはP群29.22%、N群32.33%、MUはP群35.43%、N群35.19%、RAは、P群5.27、N群5.88と有意差は認められなかった。負荷30°前屈位でもGMのみP群9.16%、N群13.18%とP群において有意に低値(p<0.05)を示し、LESはP群32.63%、N群38.64%、MUはP群37.61%、N群42.84%、RAは、P群5.51%、N群5.94%と有意差は認められなかった。

【考察】日常生活動作の中でもリフト動作という腰痛を誘発しやすい姿勢において、P群のみGM活動が低下していたことから、前屈動作時の骨盤前傾モーメントの制御能力がP群ではN群より劣っているといえる。P群ではGMの活動が低下していることから、骨盤が前傾することで腰椎の前彎増大が余儀なくされ、腰痛の誘因になると考えられる。しかし、腰椎前彎増大に伴って活動が増加すると思われるLES、MUの有意な活動の増加は認められなかった。健常者のLES、MUの活動が体重の15%負荷で有意に増加したとの布谷らの報告があるが、本研究の対象には腰痛保有者を含むため10%と負荷を低く設定したことがLES、MUの活動を増加させなかった要因ではないかと考えられる。今回、体重の10%負荷という比較的小さな負荷でP群においてGM活動のみが有意に低値を示したことから、腰痛の発生要因としての体幹機能や姿勢制御にGMが深く関与しているといえる。

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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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