近畿理学療法学術大会
第48回近畿理学療法学術大会
セッションID: 97
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脳卒中患者における動脈硬化関連指標の経時的変化
-一症例での予備的研究-
*肥田 光正出口 祐子中園 雅子宮口 和也宮口 克之西口 知美高取 克彦
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キーワード: 脳卒中, CAVI, 経時的変化
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抄録
【はじめに】脳卒中患者の再発頻度は高く、発症後1年以内では8-10_%_、それ以降の年間再発率は5-7_%_と報告されている。諸家の報告によると、再発の原因には脳循環代謝量の減少、血管内腔の狭搾や拡張障害、血管反応性の障害などが考えられている。従って、脳卒中発症後の血管内皮機能を経時的に評価することは、動脈硬化の進展や関連疾患の再発予防に対するアプローチを行う上で重要である。近年、動脈硬化を簡便に評価できる信頼性の高い指標として心臓足首血管指数(Cardio Ankle Vascular Index; 以下CAVI)が注目されている。しかし、脳卒中患者における経時的変化を追跡した報告はない。そこで今回、我々は脳卒中患者1症例のCAVIを入院時から経時的に追跡し、身体機能改善に伴う変化を調査した。
【症例】66歳の男性(身長163cm,体重50kg,BMI18.8)であった。某日左片麻痺症状が出現しA病院へ救急搬送後、右視床出血と診断され治療目的で入院した。合併症は腎不全で、13年前から週3回の人工透析治療を実施していた。発症前のADLは自立していた。
【初期評価】意識レベルはJCS_II_-10であった。高次脳機能障害は、左半側空間無視、注意障害が認められた。左上下肢の深部、表在感覚は脱失していた。麻痺側運動機能は、ブルンストロームステージ(以下Brs)が上肢_II_手指I下肢_III_であった。ADLはBarthel Index(以下BI)が0点で、基本動作は全介助を要した。
【方法】CAVIは、VaSera VS1500E(フクダ電子社製)を用い発症後2週から14週まで合計4回測定した。CAVIは血圧変動に依存しない血管の伸展性を反映する指標で、9.0以下が正常値とされている。なおCAVIの測定は対象者とその家族に目的を説明し、同意を得ると共に、結果の説明を行った。また意識レベルや高次脳機能、Brs、ADLの変化も経時的に評価した。
【結果】発症後2週目のCAVIは9.5であった。この時点で本症例の意識レベルは改善したがADLは変化せず、BIは10点であった。しかし10週頃より全身状態が安定し、活動性や運動療法の量も増加しADLに変化が見られるようになった。BIは発症後14週目に45点へ改善し、BIの変化に伴いCAVIも8.6へ改善が認められた。しかし、14週間で高次脳、感覚機能、Brs、BMIに著明な改善は得られなかった。
【考察】本症例のCAVIは発症後14週目に改善が認められた。これは、全身状態安定に伴う活動性の向上や運動療法の量の増加が血管内皮機能の改善に寄与した可能性が推察された。CAVIの妥当性、信頼性、再現性は確認されているため、今後は症例数の蓄積や対照群を設定し検討することで、脳卒中患者に対する運動療法が血管機能に与える影響を明らかにしていく必要がある。
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© 2008 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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