近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 100
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脳卒中片麻痺患者における立位での麻痺側下肢への荷重が麻痺側上肢にもたらす影響
*米田 浩久谷埜 予士次鈴木 俊明
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抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者の麻痺側上肢に対しては、伸展位での持続伸張によって痙縮の抑制が図られることを頻繁に経験する。しかしながら、動的な場面で抑制を維持することは困難であり、麻痺側上肢へのアプローチを困難にさせる。つまり、動作の再獲得や麻痺側上肢の改善を導くためには、動的な場面のなかで容易に痙縮を抑制できる手段が必要ではないかと考える。 今回、麻痺側上肢に屈曲共同運動パターンを認めた脳卒中右片麻痺患者に対して、立位で麻痺側下肢に荷重させることにより麻痺側上肢に改善を認めた。そこで、立位での麻痺側下肢に荷重時の表面筋電図計測をおこない、麻痺側の上肢をはじめとした筋活動の変化を検討したので報告する。なお、症例には本研究の趣旨を説明のうえ同意を得た。
【症例紹介】症例は59歳の左脳出血右片麻痺患者である。平成X年10月に自宅にて夜中に倒れ、A市民病院に救急搬送され入院となる。その後、複数の医療機関を経て、平成X+1年5月にリハ目的にて本学附属診療所へ通院開始となる。身のまわり動作は要一部介助、起居動作は自立、移動動作はT字杖歩行であった。主訴は「(麻痺している手足が)思うように動かない」、ニーズは「杖なしで歩きたい」であった。今回焦点とした麻痺側上肢は、常に肩関節軽度屈曲・軽度内転・内旋、肘関節中等度屈曲、前腕回内、手関節掌屈・尺屈、手指屈曲による屈曲共同運動パターンを呈していた。しかしながら、立位で麻痺側下肢へ荷重させることにより、同側上肢の屈曲共同運動パターンの改善を頻繁に認めていた。
【表面筋電図学的計測】計測筋はいずれも麻痺側で、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、外内腹斜筋重層部位、内腹斜筋、多裂筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、前脛骨筋、下腿三頭筋とし、計12ch使用した。計測課題は静止立位と立位での麻痺側下肢への荷重の2通りを設定した。得られた表面筋電図から各課題安定後3秒間の筋積分値を求め、3回の平均筋積分値をもって代表値とし、両課題の比較検討をおこなった。なお、統計学的検討には対応のあるt検定を用いた。
【結果】両課題の代表値に有意差は認められなかったものの、立位での麻痺側下肢への荷重時には次のような傾向を認めた。まず、腹直筋、外腹斜筋、外内腹斜筋重層部位、大腿四頭筋に筋活動の増大を認め、多裂筋に筋活動の減少を認めた。また、焦点とした麻痺側上肢については、上腕二頭筋の筋活動の現象はわずかであったが、上腕三頭筋の筋活動に著しい増大を認めた。
【まとめ】今回、麻痺側下肢への荷重によって痙縮筋である上腕二頭筋の抑制が図られた結果、拮抗筋である麻痺側上腕三頭筋の筋活動が増大したことが考えられ、このため麻痺側上肢の改善が図られたと考えられる。
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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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