近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 111
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学生が抱く臨床実習における積極性とは (1)
-臨床実習指導者との比較に視点をおいて-
*中谷 秀美藤平 保茂
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キーワード: 積極性, 臨床実習, 学生
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抄録

【目的】臨床実習(以下、実習)は、理学療法士(以下、PT)を目指す学生にとって臨床での理学療法を経験できる重要な学外授業であり、 810時間以上(18単位)を受けなければならない必須科目である。そのためPT養成校の教員は、日頃の学内授業や実習対策に特化した授業やカリキュラムを設け、学生への教育を行っている。また、学生は、実習生として臨床実習指導者(以下、指導者)の指導のもと、さまざまな経験を通して成長していく。その中で、学生が、指導者から「積極性がない」との指摘を受けることがある。これは、実習評価において、しばしば問題視される点である。「積極性とは、自ら進んで物事を行う性質」という概念は一致されているものの、仮に、具体的な指導者が抱く学生の積極性のある行動と学生が抱く積極性のある行動に違いがあれば、「積極性がない」との評価が下されることが生じるであろう。藤平らは、第50回近畿理学療法学術大会において、指導者経験のあるPTを対象にした実習における学生の積極性について調査結果を報告した。そこで本研究の目的は、学生が抱く実習での積極性のある行動とはどのようなものがあるかを調査するとともに、指導者と学生との間に、積極性への捉え方の違いがあるのかを明らかにすることとした。
【方法】<対象>一度長期実習に参加経験のある奈良リハビリテーション専門学校の3年生22名と大阪河?リハビリテーション大学の4年生30名、および参加経験のない低学年の学生117名、計169名(男性120名、女性49名)であった。 <調査票>独自に作成した調査票を用い、自由記載形式にて回答を求めた。質問内容は、「あなたが思う臨床実習における積極性とは、どのようなことだと考えますか」であった。 <集計>得られた回答をキーワード化にて細分化し、KJ法を用いてカテゴリーに分類した。得られたカテゴリーを多重回答形式での回答とみなし集計した。さらに、これらのカテゴリーを、社団法人理学療法士協会による「臨床実習教育の手引き」第4・5版を参考に、技術教育から生じる行動にて分類した。
【説明と同意】本研究は、奈良リハビリテーション専門学校および大阪河?リハビリテーション大学倫理委員会規則に従うもので、調査にあたっては、対象者に本研究の主旨を説明し、同意を得た。
【結果】KJ法により、11このカテゴリーが得られた。さらに、これらを「臨床実習教育の手引き」に沿って分類した結果、得られたカテゴリーは実習への態度面を行動目標とする情意領域と、知識・問題解決面を行動目標とする認知領域にあることがわかった。情意領域は、「取り組み姿勢や態度」(97人、全体の57.4%)、「質問する」(92人、54.4%)、「行動する」(72人、42.6%)、「コミュニケーションをとる」(68人、40.2%)、「連絡・報告・相談をする」(38人、22.5%)、「考える」(17人、10.1%)、「疑問を持つ」(10人、全体の5.9%)、「課題を遂行する」(7人、4.1%)の8カテゴリーで構成され、認知領域は、「自己学習する」(35人、20.7%)、「意見する」(31人、18.3%)、「自己分析する」(6人、3.6%)の3カテゴリーで構成された。
【考察】学生は、日頃の学内授業や低学年時の実習を通し、実習に臨むための取り組み姿勢や心得、理学療法に必要な知識や技術を身に付けるための教育を受けている。結果から、学生は、理学療法そのものや患者への関心を持して実習に取り組むこと、患者や指導者としっかりコミュニケーションをとることで信頼関係を築くこと、目の前で起こっている事象に疑問を抱き、問題解決のために自分で考え調べること、そして、分からない時には指導者に質問することが、積極性のある行動と捉えているものと考えられる。また、状況に応じて、指導者からの指示を待つのではなく自分から率先して行動することや自分の意見を伝えること、連絡・報告・相談をすること、自分自身への分析を行うことで、より良い成果を望んでいるものと考えられる。また、指導者から出された課題を遂行する自体は積極性があるとは言い難いが、学生は、実習が円滑に実施できていない状況下では、積極性を維持する行動と考えているのではないかと思われる。 先行研究では、指導者が抱く学生の積極性を規定する因子が情意領域と認知領域にある、としている。今回の学生への調査結果から、学生が抱く積極性を規定する因子は、指導者が抱くそれとほぼ同じものであることが示唆された。
【理学療法研究としての意義】実習生が抱く臨床実習での積極性のある行動とはどのような行動であるのか、その具体的な行動因子を確認することができた。今回の結果は、実習における学生指導のための参考資料になるものと考える。

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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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