近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 112
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学生が抱く臨床実習における積極性とは (2)
-学年の違いに視点をおいて-
*藤平 保茂中谷 秀美久利 彩子藤野 文崇小枩 武陛
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キーワード: 積極性, 臨床実習, 学生
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抄録

【目的】臨床実習(以下、実習)は、理学療法士を目指す学生にとって臨床での理学療法を経験できる重要な学外授業であり、 810時間以上を受けなければならない必須科目である。実習に臨む学生は、臨床実習指導者(以下、指導者)の指導のもと、さまざまな経験を通して成長していく。しかし、一部の学生の中には、「積極性がない」ことが原因で十分な経験を積み重ねることができない学生がいる。「積極性とは、自ら進んで物事を行う性質」という概念は一致されているものの、実習の主体である学生自身が抱く具体的な積極性のある行動についての研究、殊に、学年の違いに視点をおいた研究はほとんど見当たらない。そこで本研究の目的は、学生が抱く実習での積極性について調査を行い、学年と積極性の捉え方には関係があるのかを明らかにすることである。
【方法】<対象>一度長期実習を経験した52名の学生(本学の30名および奈良リハビリテーション専門学校の22名。以下、高学年群)と未経験の学生117名(本学の1週間の見学実習に臨む57名と3週間の評価実習に臨む60名。以下、低学年群)の計169名(男性120名、女性49名)であった。 <調査票>独自に作成した調査票を用い、質問内容は、「あなたが思う臨床実習における積極性とは、どのようなことだと考えますか」という自由記載形式で回答を求めるものであった。 <集計および分析>得られた回答をキーワード化にて細分化し、KJ法を用いてカテゴリーに分類した。さらに、得られたカテゴリーを多重回答形式での回答とみなしアフターコーディングを行い、分析の対象とした。学年と積極性の捉え方の関係をみるために、χ二乗独立性の検定またはフィッシャーの直接確率計算法を行った。なお、有意水準を5%未満とした。
【説明と同意】本研究は、大阪河?リハビリテーション大学(以下、本学)倫理委員会規則に従うもので、調査にあたっては、対象者に本研究の主旨を説明し、同意を得た。
【結果】KJ法により、11カテゴリーが得られた。得られたカテゴリーにコーディングを行い分析した結果、回答人数の多い順に、「取り組み姿勢や態度」(高学年群25人、低学年群72人)、「質問する」(30人、62人)、「行動する」(35人、37人)、「コミュニケーションをとる」(19人、49人)、「連絡・報告・相談をする」(20人、18人)、「自己学習する」(16人、19人)、「意見する」(17人、14人)、「考える」(5人、12人)、「疑問を持つ」(4人、6人)、「課題を遂行する」(5人、2人)、「自己分析する」(4人、2人)であった。さらに検定を行った結果、「取り組み姿勢や態度」、「質問する」、「コミュニケーションをとる」、「考える」、「疑問を持つ」、「自己分析する」では、有意な関係は認められなかった。しかし、「行動する」、「連絡・報告・相談をする」では有意な関係が認められた(p<0.001)。また、「意見する」(p<0.01)で、さらに、「課題を遂行する」、「自己学習する」でも有意な関係が認められた(p<0.05)。
【考察】結果より、学生が抱く実習での積極性には、どの学年においても同様に捉えられる行動因子と、高学年学生のみに関係が認められた因子が一部存在した。低学年群の学生でさえも、高学年群同様、実習における積極性とは、実習への取り組み姿勢や態度を備えていること、指導者や関係スタッフ、患者とのコミュニケーションをとること、目の前で起こっている事象に疑問を持ち、考え、質問すること、と捉えていると考えられる。一方、高学年群は、自覚と責任のもと臨床での患者担当や指導者との関わりを通して、指導者からの指示を受ける前に周りの状況に応じた行動をとること、連絡や相談をすることで情報交換や共有に努めること、より良い知識や問題解決のための工夫や方法を身に付けるために分からないことは自己学習で補い、自分の意見や考えを伝えること、と捉えていると考えられる。学内では、カリキュラムの都合上、学年が上がるにつれ受講すべき専門科目が多くなることから、学生が実習で実施できる行動には必然的に学年間で差が生じる。しかし、学年間で積極性の捉え方の一部に違いを生じた原因は、学内授業だけではなく、長期の実習経験も大きく影響しているためと考えられた。
【結語】学生が抱く実習での積極性は、どの学年においても同様に捉えられる行動因子であった。しかし、その中には、高学年学生のみに関係が認められた因子が存在し、それは、長期実習への参加経験の有無に影響を受けることが示唆された。
【理学療法研究としての意義】今回の研究により、学生が抱く実習での積極性の捉え方には、学年により異なる因子が存在することが確認できた。実習における学生指導のための参考資料になるものと考える。

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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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