抄録
【目的】下腿骨骨折等の下肢の傷害において、一般的に手術後の歩行練習は、部分荷重歩行より開始し徐々に負荷を増量してゆく。現在、主に臨床で行われている部分荷重歩行は、体重計を用いて足底と下肢全体の感覚で過重を学習する方法(以下、従来法と略す)である。しかし、従来法では部分荷重歩行が適切に行われているかどうかが不確実と思われる。
今回我々は、(株)イマック社と現在共同開発中の靴型荷重測定装置ステップエイド(以下、ステップエイドと略す)を用い、歩行時の患肢への荷重量を測定し、部分荷重歩行が適正に行われているのかどうかを、従来法とで比較し、その安全性について検討した。
【方法】ステップエイドは、足底に内蔵された圧センサーがあり、靴よりコードが出ていてその先に計測器が付き、荷重量の測定と記録ができる装置である。さらにあらかじめ適正荷重域を設定することができ、適正荷重域と超過荷重域にて異なる音信号を発し、荷重状態を使用者に知らせることができる。コンパクトな靴型の装置であるため、容易に着脱でき、歩行の大きな妨げにならず、平地のみならず階段昇降時にも使用でき、どこでも使えるのが特徴である。
対象は、本院で手術施行された踵骨骨折1例、下腿骨骨折1例、足関節両果骨折4例、足関節脱臼骨折1例、アキレス腱断裂1例の入院患者で、手術後に部分荷重歩行の指示が出された50歳~73歳の8名(平均63.5±7.5歳)である。
測定方法は1/3、1/2、2/3の部分荷重歩行時期に実施し、ステップエイドを装着し、まず消音状態にした従来法にて約20m歩行後、次に音信号を発する状態で同様に適正荷重域と超過荷重域とを音で認識させ歩行し患肢への荷重量を連続測定・記録した。歩行適正荷重域の上限は、指示された荷重値を超えないように設定した。分析は患肢への荷重回数に対する荷重量のピーク値を適正荷重域内のものと、過荷重域との率として算出し、比較・検討した。
【説明と同意】本研究においては本院が設置する治験審査委員会において、倫理性や科学性が十分であるとの審査を受け、実施することが承認された。また対象者には、事前に装置使用の説明を文書と口頭にて行い、本研究における同意と承諾を得ている。
【結果】患肢への適正荷重率の比較では、ステップエイドを使用した部分荷重歩行では61~81%得られ、従来法の30~46%に比べ有意に高く適正な部分荷重歩行ができたことを示した。
_丸1_ 1/3部分荷重:67.8±27.0/45.9±34.1 % P≤0.05
_丸2_ 1/2部分荷重:61.4±28.3/29.9±28.1 % P≤0.03(ステップエイド/従来法)
_丸3_ 2/3部分荷重:80.6±35.9/41.4±32.9 % P≤0.03
患肢への超過荷重率は、ステップエイドを使用した方が1/3,1/2部分荷重歩行時において、有意に低くより安全に歩行できることが示唆された。
_丸4_ 1/3部分荷重:29.2±29.5/47.8±38.6 % P≤0.05【ステップエイド/従来法)
_丸5_ 1/2部分荷重:36.4±31.7/69.6±34.2 % P≤0.05
_丸6_ 2/3部分荷重:16.7±37.2/21.6±44.0 % 有意差認めず
【考察】手術後の適切な部分荷重歩行は、骨癒合の促進や患肢の循環の改善に役立ち、歩行能力の回復やADL能力の回復には重要である。しかし、その半面超過荷重歩行を続けると患部の再骨折や、再断裂の危険性を伴う。従来法による感覚的な部分荷重歩行は、不確実性があるため再骨折等の危険が危惧され、慎重になりすぎるとリハビリ進行が遅れることがあった。 今回、平均年齢63.5歳と、比較的年齢の高い対象者に対しても、ステップエイドを使用した部分荷重歩行が従来法に比べ適正荷重率と超過荷重率とも優れていた。特に歩行練習開始時期の1/3,1/2部分荷重歩行時の超過荷重率が有意に低かったことは、再骨折や再断裂防止に対してより安全性が高いと考えられ、また荷重増量が円滑に行えることが示唆された。若吉らは、健常人23名に対して部分荷重歩行を、ステップエイドを使用した群と従来法の群とで比較し、ステップエイド使用群が適正な荷重を繰り返し行うほど学習効果の為より有意に高くなることを報告をしている。今後、高齢者の骨折の増加が予想される中、ステップエイドの使用で、より簡便に安全性の高い部分荷重歩行が行えると考える。またさらにステップエイドに改良を加え、早期の部分荷重歩行や学習効果による確実な部分荷重歩行にすることができると考えられる。
【理学療法研究としての意義】一般に、部分荷重歩行練習は高齢者や知覚障害を合併した症例には難しいとされているが、本研究結果よりステップエイドを用いることで、より安全で容易に部分荷重歩行練習ができ、歩行能力の回復が見込まれることと思われる。