近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 31
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健常者における体幹屈曲に伴う胸腰背部の皮膚の伸張性について
*和田 直子岡山 裕美熊崎 大輔大工谷 新一
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キーワード: :皮膚, 伸張性, 体幹屈曲
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抄録
【目的】腰椎周辺疾患の術後患者において、体幹屈曲動作の際に、術創部のつっぱり感を訴える人が多い。この原因の一つとして術創部の皮膚の伸張性低下が考えられるため、手術後早期から皮膚の伸張性を評価することは重要と考えられる。そこで今回、健常者における体幹屈曲に伴う胸腰背部周囲の皮膚の伸張性について検討した。
【方法】胸腰背部に術創部のない健常男性10名を対象とし、まず、スパイナルマウス(index社製)を用いて、端座位での体幹中間位と体幹屈曲50°位での胸椎弯曲角、腰椎弯曲角を測定した。スパイナルマウスの腰椎弯曲角の平均値(index社)よりも腰椎弯曲角が大きかった被験者4名を腰椎優位群、スパイナルマウスの胸椎弯曲角の平均値よりも胸椎弯曲角が大きかった被験者4名を胸椎優位群とした。
つぎに、被験者にプラットホーム上で端座位をとらせ、ボールペンで胸腰椎棘突起下縁に×印をつけた。その際、上肢は体幹屈曲運動に支障がないように自然下垂させ、骨盤中間位、膝関節屈曲90°、足関節底背屈0°とし、足底は床へ接地していることを条件とした。第1から5胸椎棘突起間を_I_区画、第5から9胸椎棘突起間を_II_区画、第9胸椎極突起から第1腰椎棘突起間を_III_区画、第1から5腰椎棘突起間を_IV_区画とし、計4区画に分けた。各区画の距離をメジャーにて計測し、その距離を基準距離とした。体幹中間位から自動運動にて10°、20°、30°、40°、50°と体幹屈曲運動を行い、各角度において各区画の距離をメジャーにて測定した。体幹屈曲角度は、ゴニオメーターを使用し測定した。
伸張差は、求める屈曲角度の区画距離から前屈曲角度の区画距離を引いたものとし、各屈曲角度の伸張差を基準距離で除し、100を乗じたものを伸張率とした。
統計学的処理では、各群での各体幹屈曲角度の区画間における伸張率の比較を一元配置分散分析で統計処理した後に、Tukeyの多重比較の検定を実施した。また、胸椎優位群と腰椎優位群の角度間における伸張率の比較には対応のないt検定を実施した。なお、有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】被験者には本研究の目的を十分に説明し、同意を得た。
【結果】スパイナルマウスによる胸椎弯曲角の平均値は、胸椎優位群、腰椎優位群の順に43.5±3.51°、24.7±12.52°であった。同様に、腰椎弯曲角は22.8±16.92°、40.8±1.89°であった。また、腰椎優位群では、屈曲初期における可動性が大きかった。
各屈曲角度の区画間における伸張率については、胸椎優位群での0°から10°間において区画_I_が区画_II_よりも有意に高値を示したが(p<0.05)、他の区間では有意な差は認められなかった。一方、腰椎優位群ではすべての角度間において有意差はなかった。また、腰椎優位群と胸椎優位群の角度間における各区画の伸張率において、30°から40°間の区画_II_では、腰椎優位群が有意に高値を示した(p<0.05)。
【考察】胸椎優位群では、0°から10°間において区画_I_の伸張率が区画_II_と比較し高くなった。胸椎の椎間関節面は後外側方を向き、かつ前額面よりになっているため、胸椎は屈伸、側屈、回旋運動が可能となっている。しかし、胸椎の関節面は急激に傾斜し、垂直化しているため、頚椎と比較し、屈伸運動は制限される。またRolfによると、皮膚が伸張されにくい部分では、その部分を補うように他の部分が動くとの報告がある。これらのことから、体幹屈曲動作おいて頸椎の屈曲が生じることに伴って、上位胸椎部の動きが増加したために区画_I_の伸張率が高くなったと考えられる。一方、腰椎優位群は、スパイナルマウスの測定結果から胸椎よりも腰椎の可動性が大きく腰椎部の皮膚が伸張されやすいと考えられたが有意な結果は得られなかった。これは、腰椎部の皮膚が伸張されることに対して、胸椎部の皮膚が腰椎部の方向に動くことで対応している可能性が考えられた。
また、30°から40°間において、区画_II_の伸張率が腰椎優位群の方が胸椎優位群よりも高くなった要因として、胸椎の可動性が関係していると考えられる。腰椎優位群では、体幹屈曲初期では腰椎の可動性が大きく、その後の腰椎の可動性変化は少なかったため下位胸椎の可動性が増大したのではないかと考えられた。胸椎の可動性が増大したことで、下位胸椎部の皮膚が伸張され、それを補うように中位胸椎部の皮膚が移動したため、腰椎優位群の区画_II_の伸張率が高くなったものと考えられた。
【理学療法研究としての意義】体幹屈曲動作の際に、皮膚のつっぱり感を訴える腰部周辺疾患の術後患者に理学療法評価を行う場合には、皮膚の滑走性に併せて椎骨の可動特性を考慮する必要がある。
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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