近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 56
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立位での靴下着脱動作の質的改善を認めた脳血管障害右片麻痺一症例における機能変化に伴う下肢脊髄運動神経機能の興奮性の変化
*山下 彰鈴木 俊明土井 鋭二郎
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抄録
【目的】  立位で靴下の着脱動作時のバランス維持を難しくしている脳血管障害後右片麻痺患者を経験した。治療において立位バランスが改善し、立位での靴下の着脱動作の質的改善を認めた。立位での靴の着脱の質的改善を目標とするため、立位バランスの向上を促す運動療法を行った。理学療法評価と共に、下肢の脊髄運動神経機能の興奮性をF波にて検討した。
【方法】  対象者は51歳の左視床出血後遺症者例1名である。検査測定は32日間で月2回の頻度で評価し、治療が1 回1時間で週5~6日間実施した。神経学的検査としては立位での麻痺側母趾外転筋をF波振幅、手・上肢・体幹・下肢の姿勢筋緊張、上下肢の腱反射、手掌・手指の触覚・位置覚・運動覚を評価した。立位バランス検査としては片脚立位・マンテストを評価した。筋電計Viking Quest(Nicolet)を用い、静止立位の麻痺側母趾外転筋より導出するF波にて下肢脊髄運動神経の興奮性を評価した。F波導出方法は麻痺側右内果後下方にある脛骨神経に対して0.5Hzの刺激頻度と0.2msの持続時間で32回刺激し、麻痺側母趾外転筋より導出した。F波波形分析はF波振幅で評価した。 初回での治療台へ非麻痺側下肢を支持した中での靴下着脱動作で股関節屈曲・内転・内旋による麻痺側骨盤の後退に伴い膝関節過伸展し、足部後外側優位で支持しており、リーチングの際に麻痺側肩甲骨過外転・肘関節屈曲が生じていた。膝関節過伸展を解除すると右側方へ骨盤が過剰に移動して後側方へバランスを崩すため、見守りが必要であった。主要問題として、下腿三頭筋に過緊張があり、足底の固有感覚低下及び腹筋群と殿筋群と下肢近位筋群の低緊張が骨盤後退を生じさせ、過緊張を強め、動作の質を低下させていると考えた。治療は立位で両側踵骨支持から骨盤・股関節・膝関節・足関節の段階的な屈伸動作の中で腹筋群と殿筋群と近位部のハムストリングスの協調的な筋収縮を促した。床上動作の中で足趾への荷重支持感覚入力促し、探索的な自発運動で、肩甲帯周囲筋・体幹・下肢近位部の協調的な筋収縮を両側性から非対称的に促した。リーチングの改善のために体幹・下肢に対する選択的な上肢の選択運動で前鋸筋の筋収縮を促した。
【説明と同意】  本研究ではヘルシンキ宣言の助言・基本原則および追加原則を鑑み、予め説明した本研究の概要と侵襲、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いについて同意を得た患者を対象に実施した。
【結果】  体幹右回旋、麻痺側股関節・内転・内旋に伴う骨盤後退、膝関節過伸展、肩甲骨過外転のパターンが改善され、足底全体での支持が可能になり、立位での靴下の着脱動作が自立となった。それに伴い、深部腱反射は上肢が中等度亢進から正常、下肢が中等度亢進から軽度亢進、アキレス腱が高度亢進から軽度亢進へ改善した。姿勢筋緊張は麻痺側母趾外転筋が軽度低緊張から正常域、腹斜筋群が非麻痺側・麻痺側ともに軽度低緊張から著変無し、腰背筋群が・両側共に軽度過緊張が著変無し、麻痺側殿筋群が中等度弛緩から軽度低緊張、下腿三頭筋が軽度過緊張から正常域へと変化した。Fugl-Meyer Assessmentは運動機能で上肢が62/66点から64/66点、下肢が31/34点から33/34点へ改善した。感覚検査は麻痺側足底の触覚が6/10点から7/10点、位置覚・運動覚が膝関節・足関節が6/10点から10/10点へ改善した。片脚立位が非麻痺側6.2秒から84.7秒、麻痺側3.1秒から57.2秒、マンテスト右前4.1秒から32.1秒、左前4.1秒から20.3秒へ改善した。麻痺側母趾外転筋F波変化は麻痺側母趾外転筋のF波振幅が0.5%から0.3%へと低下を示した。
【考察】  腹筋群と殿筋群とハムストリングス、肩甲帯周囲筋の協調的な活動が促されたと考えた。F波振幅が初期より低下を示したが、要因として以下2点の影響が考えられた。第1に下腿三頭筋や下腿後面筋姿勢緊張が改善された影響である。第2には立位バランスにおける体幹筋及び下肢筋の筋収縮による上行性入力が脊髄、脳幹及び大脳へ相対的な興奮性に影響を与え、麻痺側母趾屈筋群における脊髄前角細胞の興奮性が調節された影響である。上記2点の要素が影響したことでF波振幅の低下はヒラメ筋に対応する下肢脊髄運動神経機能の興奮性が変化した結果であることが考えられた。
【理学療法研究としての意義】  下衣動作改善の指標としてはアキレス腱反射と下腿三頭筋の姿勢筋緊張の評価によって評価できるが、痙縮改善の指標としてさらにF波振幅を評価する事によって、より臨床所見の客観的指標になると考えられた。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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