近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 57
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ALSの呼吸障害に対する理学療法士の関わり
~NPPV導入の経験~
*武内 剛士藤井 明弘小澤 和義石井 隆山本 和明
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キーワード: ALS, NPPV, チームアプローチ
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抄録
【目的】神経・筋疾患において呼吸障害が重症化した場合、従来は気管切開による人工呼吸器管理が一般的であったが、近年は人工呼吸器管理の前段階として非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)が選択されることが多くなってきた。非侵襲的な方法であるため、患者にとっても心理的に受け入れやすいが、マスクによる圧迫感、呼吸の乱れ、圧設定の不適応などの理由で導入に難渋することがある。今回、ALS症例のNPPV導入困難例に対して理学療法士を含めたチームアプローチによりNPPV導入が可能となった症例を経験したので報告する。
【症例紹介】68歳、男性 、身長168cm、体重44kg。x年秋頃より右上肢脱力を自覚され、x+1年3月当院神経内科受診しALSと診断。その後、x+2年1月より嚥下困難で数日間食事ができず呼吸苦も訴えられ神経内科受診し、胃瘻造設及び呼吸リハビリテーション目的に当院入院。入院時、会話でのコミュニケーションは可能。運動機能は上肢優位の麻痺でMMTでは上肢2、下肢4レベル、手指は集団屈伸可能も分離は不可。握力は0kg。腱反射は上下肢ともに亢進、舌の線維束性攣縮を認めた。ADLにおいては、寝返り可能、起き上がり介助、立ち上がり可能、歩行は連続20m歩行可能もその後の倦怠感は強い状態であった。Barthel index 55/100、ALSFRS-R:21/48、重症度分類:4。
【説明と同意】患者、家族に発表の趣旨を説明し同意を得た。
【経過・結果】入院時の血液ガス分析ではPaO2 87.9mmHg、PaCO2 47 mmHgであったが、その後、徐々に二酸化炭素の貯留を認め、入院3日目ではPaO2 85.1mmHg、PaCO2 52.9 mmHgと二酸化炭素の貯留を認めた。また、SpO2の24時間モニタリングにて夜間の低換気、SpO288%以下を5分以上認め、不眠の訴えも認めた。ALSによる呼吸筋障害が進行していると判断され、入院5日目よりNPPV導入となった。初日はベットサイドにて医師によるNPPV導入を試みるがすぐに不快感訴えられて継続できなかった。その後、医師の指示の元、理学療法士介入により呼吸理学療法を含めたNPPV導入を再開、もう一度導入の必要性を説明し、最低圧IPAP4cmH2O、EPAP2 cmH2Oから開始した。マスクは鼻口マスクを使用し、初めはマスクはバンドで固定せずに添える程度から開始した。また、呼吸パターンの指導、呼吸介助を併用し、圧に慣れてもらうように働きかけた。何度か呼吸苦の訴えはあったが、初日は1時間程度継続することができた。その後3日間、時間の変動はあるものの日中3時間程度継続できIPAPも8 cmH2Oまで可能となり、一回換気量も400ml前後で安定したため4日目より夜間NPPV導入。夜間導入初日は3時間で不快感訴えあり中断した。看護師と相談し、呼吸パターンの指導、声掛け等の心理的サポートを依頼した。その後、日により時間の変動はあったが、1週間程度で夜間6~7時間の継続が可能となり、夜間の低換気、PaO2の低下、PaCO2の上昇を予防できた。また、夜間の不眠も解消できた。
【考察】NPPV導入において導入初日から数日間はマスクフィッティングと心理的サポートが大変重要であると言われている。また、NPPV導入、継続困難例の原因には呼吸理学療法の未介入、心理的アプローチの不足等も挙げられている。今回の症例の様に導入初期にベットサイドでは受け入れ困難な場合においても、医師の指示の元、理学療法士がリハビリテーション室でゆっくりと時間をかけ、圧の調整を行い、呼吸パターンの指導、呼吸介助を併用し、いつでも不快感への対応にサポートが受けられるという安心感が導入成功に繋がった要因でもあると考える。今回の症例を経験して神経・筋疾患に対するNPPV導入において理学療法士を含めたチームアプローチの大切さ、心理的サポートの重要性を学んだ。今後も理学療法士がNPPV導入にチームとして関われる様、関わりを模索していく。
【理学療法学研究としての意義】NPPV導入に際して理学療法士がチームアプローチとして呼吸理学療法、心理的サポートを行うことでNPPV導入困難例に成果が挙げられると感じた。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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