近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 61
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発症早期のトイレ移乗・トイレ動作に着目した右中大脳動脈領域梗塞後の一症例
*宇渡 竜太郎槇得 良太太田 貴奈藤安 悠子
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抄録
【目的】
 脳血管障害患者におけるトイレ移乗、トイレ動作は急性期より問題を認め病棟スタッフを含め取り組むべき課題となる。適切な評価の上でトイレ移乗、トイレ動作を実施することは必要であるが、急性期では点滴管理やルート類も多く、適切な時期の適切な介助量にて行えずベッド上にて実施することも少なくない。今回、麻痺側上肢・体幹・下肢の姿勢筋緊張が弛緩を呈し、端坐位での安定性が欠如した右中大脳動脈領域梗塞後の症例を担当した。発症早期よりトイレ移乗、トイレ動作の評価を病棟スタッフと行い排泄動作が介助不要となったので考察を加えここに報告する。
【方法】
 シングルケーススタディーによる症例報告を方法とする。症例は43歳、男性。身長178cm、BMI22.1。平成23年6月X日、連絡不通のため親戚が訪室すると倒れている所を発見。当院救急搬送、CTにて右中大脳動脈領域梗塞と診断、同日入院となる。翌日より理学療法開始。理学療法開始3日目、端坐位治療開始。理学療法開始4日目、初期評価にてStroke Impairment Assessment Set(以下、SIAS) 18/76、麻痺側上肢 5/25、麻痺側下肢 5/30、その他の項目で 8/21。麻痺側上肢・下肢の運動は認めず、上肢・下肢ともに重度の触覚鈍麻を認めていた。Functional Assessment for Control of Trunk(以下、FACT)1/20、端坐位は上肢支持なしでは困難であった。端坐位での姿勢アライメントは、頸部・上部体幹屈曲位、麻痺側肩甲骨後退・骨盤後傾位。姿勢筋緊張は、麻痺側上肢・体幹・下肢ともに弛緩を呈していた。同日にトイレ移乗、トイレ動作の評価を看護師・介護福祉士と実施。Functional Independence Measure(以下、FIM)トイレ移乗1/7、トイレ動作1/7。移乗は、殿部離床より前方に体幹がもたれかかる形となり全介助での誘導。立位保持が行えないため、2人介助にて下衣の着脱を実施。また、排泄時は手すり把持下でも坐位保持が安定せず、頭頸部・体幹が前方へ崩れ介助を要する状態であった。医師・看護師・介護福祉士と確認し、トイレ動作はベッド上での実施となった。治療では、坐位より立位へと段階的な抗重力肢位を誘導するとともに、非麻痺側殿部・足底より体重移乗を行う中で姿勢コントロールの改善を促していった。また、病棟スタッフには移乗動作の介助指導を行う中で現状能力の共有を行うようにした。
【説明と同意】
 本報告は口頭にて、内容・目的を十分に説明し、患者および家族の同意を得たものである。
【結果】
 理学療法開始10日目、再評価実施。Stroke Impairment Assessment Set(以下、SIAS) 27/76、麻痺側上肢 8/25、麻痺側下肢 8/30、その他の項目で 11/21。麻痺側股関節屈曲運動を認め、上肢・下肢ともに触覚の僅かな変化を認めた。FACT 6/20、端坐位は上肢支持なしで可能となり非麻痺側上肢の挙上が可能となった。端坐位での姿勢アライメントは、麻痺側肩甲骨後退・骨盤後傾位は残存するものの、頸部・上部体幹伸展位の僅かな改善を認めた。姿勢筋緊張は、麻痺側殿筋群・股関節屈筋群の僅かな出力を認めた。FIMトイレ移乗3/7、トイレ動作1/7。移乗時、殿部離床に介助を要するものの、自己にて体幹の空間保持をし非麻痺側足底へ体重移乗する中で手すり把持して立位保持可能となった。これより1人介助にて下衣の着脱を実施し麻痺側下肢の誘導をして着坐。排泄時は手すり把持なしで坐位保持可能、非麻痺側方向への体幹の制動も可能となり、ナースコールを押すことができた。これより、医師・看護師・介護福祉士と確認し、リハビリパンツを着用し日中は一人介助でのトイレ誘導、排泄時のみ見守りを外す方向となった。
【考察】
 今回、急性期からのトイレ動作を病棟スタッフと評価することより、介助方法と介助量の検討をすることができた。移乗動作は、初期評価時では全介助で行っていたものの、自己にて体幹を抗重力位に保持し非麻痺側足底への体重移乗が可能となったため、殿部離床と下衣の着脱、便器への着坐に対する麻痺側下肢の誘導のみの介助となった。また、排泄場面では非麻痺側方向への体幹の制動が可能となり見守りを外すことができた。非麻痺側殿部・足底への体重移乗を可能とする姿勢コントロールの改善が、本症例のこの時期には重要であったと考えた。
【理学療法研究としての意義】
 脳血管障害患者における急性期でのトイレ動作の開始にあたり、実際のトイレ動作場面で病棟スタッフと介入し現状能力の共有をすることが、効率的なトイレ移乗、トイレ動作の開始に重要であることが示唆されたのではないかと考える。
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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