抄録
【目的】毎年4月に開催される「兵庫県障害者のじぎくスポーツ大会」に当施設入所利用者も毎年スラローム・ボッチャ・フライングディスクといった種目に参加される。しかし、参加される利用者は毎回限られていた。今回は1人でも多くの利用者にスポーツ大会を経験し、自らの潜在能力を再認識して頂くと同時に入所生活とは異なった緊張感を味わう事で今後の生活を潤す事が目的である。競技種目に「車いす50m走」があり、利用者のみならず我々も未知である分野に挑戦した。理学療法(以下:PT)で練習に関わり、走行フォームや上肢筋力等をPTで修正させる事でスピード等に影響を及ぼすかを検討し良好な結果を得たので報告する。〈BR〉
【方法】ヒヤリングにて大会への参加希望があり、自走用標準型車いす利用者で基礎疾患脳原性四肢麻痺(72.8%)を有する利用者6名を抽出した。(内訳は、男性5名女性1名・平均年齢45.8±5.3歳)理解力があり、両肩関節周囲に関節可動域(以下:ROM)制限なく両上肢屈曲・伸筋群ともに徒手筋力検査法(以下:MMT)4以上の者をA群(2名)。理解力は欠くが参加意欲があり、両肩関節周囲に中等度のROM制限を認め、両上肢屈曲・伸筋群MMT3以下の者をB群(2名)。理解力は乏しいが、練習に毎回参加し、両肩関節周囲に著明なROM制限を認め、両上肢屈曲・伸筋群MMT3以下の者をC群(2名)と定めた。平成23年2月12日から大会前日の4月28日までの期間週1回1時間程度、車いす自走25mでターンを含む往復を2人1組ランダムに競争し、タイムを競う。ABC群それぞれのウィークポイントを動作分析し、PTで改善させた走行を取り入れる。練習開始当初・最終日までのタイムの変化を統計処理(T-student)した。レース前後では簡単な上肢の体操を実施した。また、レース待機中・終わった選手へのストレッチや筋マッサージを施行した。〈BR〉
【説明と同意】大会参加される本人及び家族様に事前に口頭にて同意を得た。〈BR〉
【結果】 総合的に訓練前の80.33±20.9secから訓練後の68.66±16.6secと明らかな(P<0.05)タイムの短縮を認めた。しかし、C群ではいずれも訓練前後でタイムの短縮は図れたが大きな改善は認めなかった。平成23年4月29日開催された大会においてはA群の金メダル受賞者は訓練前は44secであったが、訓練後42secと短縮をみた。またB群で銀メダルを受賞した1名は訓練前84secであったが、訓練後59secと短縮を認めた。〈BR〉
【考察】A群は、通常のPTにおいて上肢・体幹筋力維持・向上と走行姿勢を前傾姿勢(エアロ姿勢)に類似した姿勢での走行を徹底した。大会当日は、若干の緊張感は存在したが、気分転換の会話、筋マッサージ・ストレッチをスタート直前まで実施した。結果A群の1名は大会当日、自己ベスト36.4secを記録し金メダルを獲得した。B群は通常のPTにおいて5mを何度も車いすで走行を反復してもらい、スタートやゴールの感覚を学習して貰った。片手駆動であったため、片手での交互駆動を反復練習し、声掛けや応援を欠かさなかった。大会当日には過度の精神的緊張があり、参加中止を希望したが、励まし、スタート直前まで筋マッサージや気分転換の会話を実施した。結果B群から1名銀メダルを獲得した。C群は通常のPTにおいて、車いすで走行する楽しさ、終了後の爽快感を感じてもらうことで競技参加への意欲を高めた。C群からメダル獲得には至らなかったが、訓練開始当初と比較すると、タイムの向上は明確であった。大会終了後でも再度レースをしたいと要望がある。日々のPT練習を重ねることで「車いすレース」は楽しいものであるという認識をすべての参加者に抱いて貰うことが出来た。タイムが伸びず精神的に苦渋し、意欲低下する場面も存在したが、何度も説得したり、楽しい雰囲気作りを工面したり、応援等欠かさず大会参加へと導けた。〈BR〉
【理学療法学研究としての意義】障害者スポーツを理学療法の視点のみならず、精神面にも積極的に関与することで6名中2名が良好な結果を得た。〈BR〉