近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 63
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訪問理学療法で短期間の介入により効果を示した慢性期脳卒中者例
*大西 広倫安田  孝志
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抄録
【目的】脳卒中者において、運動麻痺はほぼ半年でプラトーに達すると言われている。病院でのリハビリを終え、在宅に戻られた後、まだ機能・能力に回復の可能性を感じる事が見受けられる。訪問リハビリにおいて、病院でのリハビリ後、まだ回復段階にある方の機能を生活の中で最大限発揮できる身体環境を導き出し、ADL向上につなげる事が必要である。今回、慢性期脳卒中者の身体機能向上を中心としたプログラムを立て、1か月短期間での理学療法効果が、訪問リハビリを通して得られたので報告する。 【方法】症例報告として、量的、質的評価を効果判定とした。対象は40歳代男性。左被殻出血を約1年半前に発症した脳卒中右片麻痺者。高次脳機能面は発声に軽度失語を認めるが、指示理解は良好であった。1か月(週1回)のリハビリ介入により、その前後を質的評価として神経学的所見、座位・立位姿勢の変化、また量的評価としてFunctional reach test(以下FRT)、Functional balance scale(以下FBS)、閉眼閉脚立位を通しバランス能力の変化をみた。FRT、閉眼閉脚立位は2回測定し、その平均値を算出した。それぞれの評価は訓練前に施行した。また1か月における理学療法プログラム内容は機能訓練を中心に行い座位・立位での麻痺側への感覚促通と体重移動、その後歩行訓練を約45分と統一して行った。 【説明と同意】被験者には、研究の趣旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。 【結果】発症から約1年5カ月後よりプログラムを開始し、神経学的所見においては、Bruunstrom recovery stage(以下Br-stage)は上肢_II_・手指_II_・下肢_III_、感覚は表在上下肢重度鈍麻、深部はそれぞれ中等度鈍麻であった。MMTは左上下肢4~5。関節可動域(以下ROM)は股関節内旋、伸展においてそれぞれ右/左、15度/20度、5度/10度であり、足関節背屈は膝屈曲位・伸展位にて測定し、右はそれぞれ10度・0度の状態であった。筋緊張は右優位に肩甲骨周囲筋(特に僧帽筋上・中部、菱形筋、大円筋、広背筋、大胸筋)、体幹、下肢筋において傍脊柱起立筋群、腰方形筋、腹直筋、ハムストリングス(外側>内側)、大腿筋膜張筋、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋膜に亢進を認めた。また右外腹斜筋においては反対側に比べ低下を認めた。姿勢においては、座位は体幹を屈曲位、右体幹側屈、右股関節外転・外旋位、また立位においては、左側優位の荷重支持となっていた。量的評価として、FRT19cm、FBS40/56点、閉眼閉脚立位18秒であった。1カ月後の神経学的所見(変化のある項目を記載)は、ROMは右股関節内旋、伸展において25度、10度。足関節背屈は膝屈曲位・伸展位にて測定し、右はそれぞれ15度、5度と向上した。筋緊張は、右の肩甲骨周囲筋、体幹、下肢筋それぞれ全ての筋において、亢進の状態から軽減、右外腹斜筋においては低緊張からやや緊張を確認できた。姿勢は、座位に関して体幹のup rightが促され、右股関節外転・外旋位減少、また立位では右への荷重増大と右荷重に対し自覚を得た。量的評価として、FRT27cm、FBS46/56点、閉眼閉脚立位30秒以上とそれぞれのバランス能力に向上を認めた。 【考察】本症例は慢性期脳卒中者に対し、1カ月の質的・量的変化を確認した。神経学的所見は、Br-stage、感覚において変化は得られなかった。これは発症から1年半経過している状態であり、発症から4カ月程度が脳卒中者の回復過程における大きな機能回復期間であるが、それに対して大幅な期間の経過がその原因と考えられる。しかし、ROM、筋緊張に変化を認めたのは、ベッド上でモビライゼーション、リリースを筋緊張亢進部位に施行、ストレッチング、ROMexを筋、関節部において施行し、腹部、股関節周囲筋群の緊張を高めた。また、座位では姿勢筋緊張の影響を受ける中、脊柱の分節性を促すように、肩甲骨、脊柱、股関節の可動性を高めながら、ベッド上同様腹部、股関節周囲の緊張を高めた。立位では体幹が崩れないよう、足部への荷重感覚を促す中で殿筋群への求心性・遠心性収縮を左右体重移動の促した。そうする事で、動作の中で体幹の分節性、また股関節、足関節戦略の対応が可能となり、麻痺側への荷重量向上、それに伴う荷重感覚の増大により座位・立位姿勢における支持基底面内での重心移動が広がったと考えられる。そのため、量的評価としてのFRT、FBS、閉眼閉脚立位におけるバランス向上も認めたと言える。 【理学療法研究としての意義】ここ数年リハビリ期間の上限により退院後、訪問リハビリのニードも高まっていると言える。また、訪問リハビリを利用される方の中には、機能回復を期待されている方も多い。その中で、社会資源、環境設定等の提供により生活能力向上を図る事は不可欠ではあるが、まだ回復可能な身体機能・動作能力に目を向け、病院退院後限られたリハビリ介入の中で身体環境を維持・向上させる事が理学療法士として必要であると言える。
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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