抄録
【目的】
高齢者のリハビリテーションに携わる機会が増えてきているなか、臨床で目標や目的を見失ってしまいそうになっている療法士は少なくないように思われる。そこで、まず入院が長期化してしまう施設での退院に関連する要因と現状を把握するために今回の調査・検討を行った。
【方法】
平成22年4月から平成23年3月まで当院へ入院した対象者からランダムに130名を抽出した。そして、カルテより性別、年齢、身長、体重、入院原因、入院病棟、入院年月日、退院年月日、入院前住居、退院先、家族構成、リハビリテーション処方箋の有無、服薬状況などの情報を収集した。その中より、退院先に関与が示唆される情報である入院期間、年齢、入院病棟、リハビリテーション処方箋の有無、キーパーソンが同居か別居であるかの情報を選択した。統計ソフトはエクセル統計2010を使用し、主成分分析を行った。
【説明と同意】
本研究では、書面により収集したデータを加工し本人の特定が出来ない形で発表するという旨に同意を得て実施した。
【結果】
対象者の属性は、男性62名(48%)、女性68名(52%)の130名を対象とした。平均年齢75.22歳(標準偏差±14.26)、平均入院期間58.65日間(標準偏差±79.88)であった。それぞれの入院病棟は一般病棟114名(88%)、介護療養病棟16名(12%)であり、リハビリテーション処方箋は処方ありが66名(51%)、処方なしが64名(49%)であった。さらに、キーパーソンが同居の対象者は65名(50%)、別居あるいはなしの対象者が65名(50%)であり、退院先は自宅が59名(45%)、施設が71名(55%)であった。
これらの項目を使用し主成分分析を行った結果、入院期間の第1主成分得点は0.74、第2主成分得点は0.35、リハビリテーション処方箋ありの第1主成分得点は0.69、第2主成分得点は0.23となった。また、寄与率が入院期間では37.56%、リハビリテーション処方箋ありでは29.06%となった。この2項目で累積寄与率は66.63%となった。
【考察】
上記の結果より、退院先への関与する因子として入院期間とリハビリテーション処方箋ありという2項目が合わせて関与するということが示唆される。これにより、入院期間が短くリハビリテーションが実施されている対象者では、単に在院日数を短縮するだけではなく、その後の退院先が自宅なのか施設なのかということについても影響を及ぼす可能性が考えられる。
在院日数を減少させていくという世間一般の動きがあるなかでも、いわゆる慢性期病院というような施設は存在しており、そこで勤務する理学療法士などのリハビリテーションスタッフは少なくない。また、そういった施設に入院している対象者の方は、年齢や原疾患のために機能回復を目指すことが難しい方も多い。これにより、そこで勤務している理学療法士などのリハビリテーションスタッフは、日々変化の少ないリハビリテーション効果からリハビリテーションを行う目標や目的を見失ってしまいそうになることも少なくないと感じている。
しかし今回の調査・検討により、入院が長期化する対象者であってもリハビリテーションを実施するということの意義を感じることは出来るのではないだろうか。日々単調になりつつある維持期リハビリテーションであっても、実施することにより自宅へ退院できるのか施設へ退院するのかということに関与していることが考えられる。
【理学療法研究としての意義】
今回の研究では、退院先へ関与する因子として考えうる項目を取捨選択し検討を行った。維持期リハビリテーションでは、明確な方策を示されていることが少なく現状を把握していくことも必要であると考える。さらには、その他の関連要因を複合的に検討していく必要性があることも考えられる。