抄録
【目的】
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)とは、慢性気管支炎、肺気腫または両者の併発により惹起される閉塞性換気障害を特徴とする疾患である。呼吸仕事量の増加、心理的な影響など種々の因子によって低体重が生じ、Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(以下GOLD)においても栄養療法の重要性が述べられている。
一方、COPD患者を対象として、運動療法と栄養補助食品による栄養療法の併用効果についても検討されている。栄養療法との併用によって、理想体重、エネルギー充足率、除脂肪体重指数、吸気筋力、体格指数、6分間歩行試験(6MWD)、健康関連QOL(CRQ total)が有意に改善したとしている。
しかしこれらの報告は、対象がbody mass index(以下BMI)にて18.5以下の「低体重」に分類されるCOPD患者が主であり、「標準体重」や「肥満」に分類される対象のみに着目した研究は少ない。
本研究は、当院の外来呼吸リハビリテーション(以下外来リハ)に通院中のBMIにて「標準体重」、「肥満」に該当するCOPD患者を対象に、外来リハでの運動効果を検討する事を目的とした。さらに運動療法と併用した栄養補助食品の効果も合わせて検討した。
【方法】
対象は、当院の外来リハに通院中のCOPD患者で、BMIが18.5以上の「標準体重」、25以上の「肥満」に該当する10名とした。通常の外来リハに加えてBCAA含有補助食品であるアミノフィールを摂取したアミノフィール群5名(70.4±8.3歳)、通常の外来リハのみを行った対照群5名(72.8±6.5歳)とした。アミノフィール群は、1包4gを2包/日にて摂取した。
栄養状態の指標としては、血液検査にてトランスフェリン、アルブミン、プレアルブミン、コリンエステラーゼ、レチノール結合蛋白を使用し、身体組成の指標としては、筋肉量、除脂肪量を用いた。身体機能の指標としては、6分間歩行試験を行い、その歩行距離(6MWD)を使用した。いずれも、介入前、及び介入後3ヶ月で測定し、評価した。
統計解析は,運動前後での比較には,対応のあるt検定を実施した。アミノフィール群、対照群の比較には,くり返しのある2元配置分散分析(two way ANOVA)を用い,交互作用が認められた場合は要因毎に分けて検定を行い,主効果が有意であった要因では1元配置分散分析を用いて比較検討した。
統計にはSPSS15.0を用い有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
全対象者に対して事前に本研究の目的と内容を説明し、研究協力への同意を得た。本研究は近畿大学医学部倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
介入前、介入後3ヶ月時点での各指標の変化について、血液検査ではいずれの項目についても有意差は認めなかった。身体組成について、筋肉量は介入前15.7±2.2kg、介入後16.0±2.2kgであり、除脂肪量は介入前16.7±2.3kg、介入後16.9±2.3kgといずれも有意に増加していた(p<0.05)。身体機能の指標である6MWDについても、介入前339.4±109.6m、介入後405.4±164.1mと有意に増加した(p<0.05)。
アミノフィール群、対照群での比較においては、いずれの指標についても交互作用は認めなかった。
【考察】
本研究は、BMIにて「標準体重」、「肥満」に該当するCOPD患者に着目し、運動療法の効果を検討すること、また栄養補助食品の併用効果を検討することを目的とした。
栄養補助食品の摂取の有無に関らず、介入前、介入後3ヶ月時点での比較にて、筋肉量、除脂肪量、6MWDでの改善を認めた。
身体組成の指標として用いた除脂肪量については、先行研究においても重症度とは独立した予後因子であることが報告されている。外来リハの効果については、種々の研究が行われており、呼吸困難感の軽減、運動耐容能、ADLの改善、急性増悪の頻度の低下、などが報告されている。本研究にて有意な増加を認めた除脂肪量についても、予後の改善という意味では、外来リハの重要な効果であると考えられる。
栄養補助食品の運動療法との併用効果については、本研究では認められなかった。栄養補助食品の併用効果については、「低体重」、いわゆる「やせ型COPD」にて効果が顕著であるとされている。本研究にて着目した「標準体重」、「肥満」に該当するCOPD患者は、普段の食事にて充分な栄養を摂取していた可能性が考えられ、今後さらに症例数を増加した検討が必要であると考えられた。
【理学療法研究としての意義】
外来リハに通院中のCOPD患者の中でも、特に「標準体重」以上の患者については、予後因子や運動耐容能の改善に対して、運動療法が重要な因子である可能性が示唆された。