一連の脂肪族および芳香族オレフィンラジカルカチオンと分子状酸素との反応を、主に計算化学的に検討し、オレフィンの構造によるその反応性の違いについて考察した。特に、オレフィンラジカルカチオンに分子状酸素が付加して生ずるペルオキシラジカルカチオンの安定性について、基質(オレフィン)の二重結合上の置換基を系統的に変化させることによって比較検討し、スピンと正電荷の両方を有するぺルオキシラジカルカチオンにおいては、正電荷の安定化がその生成と安定性に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、スピンは、ペルオキシラジカルカチオンでは、大方、酸素上に局在化していることも同時に明らかにした。講演では、利用できる実験事実との相関についても述べるとともに、カルボカチオンの安定化の支配因子との比較も行いたい。