2023 年 8 巻 p. 13-20
本稿は、1921年11月にテニスプレーヤー清水善造が母校である群馬県立高崎中学校にて講演を行った記録について概要を紹介し、この講演記録の意義を明らかにすることを目的とした。1921年8月から9月にかけて行われたデビスカップ参戦後に初めて語られた清水の言葉であり、その語りの内容は欧米のスポーツ理解やスポーツマンシップ、さらに自らの生活信条にまでも及んでいた。
その内容は(一)剣道と庭球、(二)デヴィスカップ(ママ)争覇戦、(三)欧米の運動熱とスポーツマンシップ、(四)庭球を以て職業とせず、(五)庭球と修養、(六)欧米運動界の現状の6項目に整理され、清水のスポーツの考え方、その理解の程度が明らかにされていた。清水の語りは単なる競技礼賛ではなく、スポーツを通した自立、自国や他国の文化理解や国際的な協調の必要性にも触れた極めて幅広い内容を含むものであった。
アメリカからの帰国直後に明らかにされた清水の語りの意義は大きく、高崎中学校講演記録は貴重な歴史的研究資料と言えた。