北日本病害虫研究会報
Online ISSN : 2185-4114
Print ISSN : 0368-623X
ISSN-L : 0368-623X
報文
リンゴ急性衰弱症の発生抑制法の検討
中村 太紀 高橋 藍佐々木 真人加藤 真城岩舘 康哉
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 2019 巻 70 号 p. 101-104

詳細
抄録

岩手県では,2014年以降,主に県南部において,リンゴの若木で接木部周辺樹皮からの樹液漏出を伴う急性衰弱症が発生し問題となっている.病原菌と推定されるDickeya dadantiiは,接木部周辺の亀裂から感染している可能性が示唆されていることから,接木部周辺の樹幹部を物理的に保護することで,本症の感染を防止できるか検討した.感染の有無は本症の初期症状と考えられる樹液漏出の有無に基づき評価した.その結果,2017年度試験では,ポリエチレン製シートによる樹幹部の被覆処理でのみ発生抑制効果が確認された.2018年度試験では,ポリエチレン製シート被覆処理のほか,アクリル塗料塗抹処理でも発生抑制効果が認められた.しかし,ポリエチレン製シート被覆処理については,葉の黄化など樹体生育に対する負の影響がみられたことや,凍害の発生リスクを高めることから,実用的な本症の発生抑制法にはなり得ないと判断された.一方で,アクリル塗料処理は,リンゴの樹体生育に負の影響はみられなかったため,本症対策の一つになり得ると推察された.

著者関連情報
© 2019 北日本病害虫研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top