2023 年 2023 巻 74 号 p. 56-60
2011年の原発事故から2023年に至るまで避難指示が発令されていた福島県相馬郡飯舘村長泥地区において2021年に造成された水田試験地を対象に,アカネ類の動態を調査した.調査では2021年と2022年に自動撮影装置と目視によって秋期の成虫の相対密度を,2022年初夏に新成虫の羽化殻数を計数した.その結果,自動撮影によるアカネ類の日当たり撮影頻度,目視による記録個体数がともに2021年より2022年で大きな値を示した.また,ヤゴの羽化殻が畦畔際10 mに平均1個以上確認された.上記の結果は,10 km2の範囲で10年程度水稲栽培が行われなかった地区においても,水田が復旧すればアカネ類は迅速に移入し繁殖することが期待できることを示唆している.